佳キ日ニ御座ル

一人目の福は、突然呼び鈴を鳴らす。
とっておきの備前雄町の「三重錦・中取り」を片手に。
成程、三を重ねるとは乙なことを。

二人目の友は、北からどどんと瓶を贈る。
「出羽桜・出羽燦々誕生記念酒」
燦々(さんさん)とはまたよい響き。

三人目の旅人は、そっと一枚の絵を置いてゆく。
若さ、そして旅人ならではの思考が
混在した手作りのアート。

三つの贈り物を手に、今宵は酒を呑みに参る。
三行半を突きつけられぬ程度に。

皆様、有難う御座居ます。
齢、三十三年目の始まりなりけり。


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裏切リノ葡萄酒會

宵の口というにはまだ早すぎる。
怪しいメンバーで始まった葡萄酒を愛でる會。
夕桜も見ぬうちからまずは泡で乾杯を。

ワインのみの食卓に並ぶ肴、
最初はチーズ、パンと順調。
手作りのバジルペーストで作った鶏肉のトマト煮込み
(池島さま・獅子王さまありがとうございます)で賑やかに。

三条会商店街「富三油」の焼きビーフンや
蓮根と豚肉炒めあたりから食卓は怪しい様相に。
そしてメインは、ホットプレートで
ソムリエ自らが焼く「王将」の餃子。
渋味がぐっとは来ない赤を合わせるソムリエ。
餃子を焼いた後は餃子から染み出た油で焼くモヤシ。
このみみっちさはこのワイン会の極み。

自家製のレモングラス(ゆかさまありがとうございます)の
ハーブティーで一息ついた刻に思うのは、
今日の肴がほとんどアンダー300円だということ。
実はワインもほとんどが1000円以下。

ソムリエは囁く。
「ワインは食中酒。食事にあわせてこそなんぼ」
いいものを沢山知っているからこそ言える言葉。
お金をかけない贅沢な時間。時間はセンス。


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天神様ノ朝拉麺

朝、北大路よりチャリで南西に十五分。
既に北野天満宮は冬の人いきれ。

一月二十五日の「初天神」は、
毎月二十五日の「天神さん」よりも規模が大きい。
骨董市でありながら露店の数も多く胸躍る。

朝飯を抜いて天神さんでラーメン(と、ビール)。
横ではおっちゃんがどて焼きをつまみながらワンカップを呷る。
おばあちゃんらもおでんをはふはふ。

午前酔いは、ちょっと悪いことをしているようで・・・。
でも昨日の晩がんばったんだ、道真公もきっと許してくれるはず。

ぶらぶらと市を冷やかし、買ったのは結局ベビーカステラと酒粕。
古伊万里も李朝も手が出ない。
でも、いいもの見た。がんばろ。

気持ちよく賑わう晴れの市。
楽しい時間は午前でお仕舞。


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紅キハ酒ノ咎

其の日くらいは、一日遊ぼうといいながら、
朝から轆轤を廻すクリスマスイヴ。
師走とは、憂うべきかな、嬉しむべきかな。

暮れ泥むことなく迫る夕刻に焦り、
少しだけでもイヴの空気を吸おう。
外は温い冬。空は仄かに紅い。
御所にも散り遅れた楓が見える。
鴨南蛮を啜り、錦を歩くだけのデート。

ディナーは、贈りものの和久傳の陶筥弁当。
(吾亦紅さま、ありがとうございます)
ケーキとチキンを焼いたら、静かに乾杯。
陶筥の渋赤がロゼに映り、頬も紅くあたたかく。

なんだか、小さく「メリー・クリスマス」。


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霜月ニ伏ス

病は気から。
自分に「大丈夫、大丈夫、すぐ治る」と
騙し騙し言い聞かせても、
いつもの晩酌のように盃に手がのびない。

風邪に罹るということは、
身体が怠いことを辛く思うのではなく、
日々の愉しみをいつもどおりにできないということを
疎ましく思うということ。
久しぶりに熱を出し、そんなことを思った。

そっと作ってくれた、妻の雑炊を大人しく啜る。
鶏の挽肉とニラの優しい味付けは、彼女の実家の味。
大家さんからもらった蕪、薩摩芋と紅生姜は彼女のアレンジ。
喉にふわっとながれた鰹出汁に、なんだか心がしみた。

脹よかな湯気越しに、妻の顔。
惚気るわけではないけれど、そばに居てくれてよかった。

今日は、お酒を我慢しよう。
こんな日があっても、ま、いいか。


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雨ノ酒呑童子

神無月は、八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まり、
各地に神が不在になるということからついた月名。
その神無月一日、神は出雲への道すがら、
雨風とともに京の都に三人の酒の使いを遣わされた。

酒の使いの開口一番、
「今日はお酒の日だから、お酒を呑まなきゃいけないんですよ。
なぜ、今日がお酒の日かは忘れたけど。」

昼にすでに二種類のワインで顔を赤く染めていた
自分の前に注がれる美酒は、
「奈良萬」のひやおろしと「北錦」の火入れ。
そして「鳳凰美田」で漬けた手製の梅酒。

酒の使いたちは、眼を輝かせ、酒について語り合う。
大のオトナが、この何の変哲もない透明の液体に
人生を照らし合わせる。
オトナって、ばかだなあ。
人間って、素敵だなあ。

ふわりと酔いながら、
呑食に関わる仕事をしていることを
誇りに思わせていただいた時間。
しんみりと心の中で「感謝」。

使いから授かった美しい飴色の梅酒は、
今日もゆっくりと、こう諭すように喉に流れ込む。

「酒は必需品ではない。でもやはりそこに酒は在り、呑む者たちが居る」


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青春ノ「大」

観光客はあまり行かない、
自分にとって、京都で一番おすすめの観光ポイント。
それが、所謂「大文字焼き」と呼ばれる「大」の字が
山の中腹に描かれた如意ヶ嶽。

哲学の道を歩き、銀閣寺に向う大勢の観光客を尻目に
門の前を左に逸れ、人通りのない山道に入ると、
たった30分の登山で、市内を見渡せる絶景の場所へ。
そう、あの「大」という字の真ん中に立つことができる。

京都という観光地の集合体をマクロに眺めて、
得した気持ちになる。

もちろん入場料なんてないこの場所は、
この街でやきものを学び、色々な思いを抱いて過ごした修業の日々、
当時の居のすぐそばにあった自分にとってのリセットポイントでもある。

この連休、学生時代の悪友とともに、
久し振りにあの景色を見に汗を流す。
京都の街を見下ろし、出町「ふたば」の豆餅を食む。
離れている間、色々と変化のあった十年間。
結局は学生時代と変わらないレベルの
冗談しか言い合えないことに、ほっとする。

ついでに吉田山にも登り、疲脚の果てに夜は居酒屋。
お互いの故郷酒である「雪漫々」と「くどき上手」で乾杯。
ありがとう、そして、がんばろう。


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琴平ノ陽射ト麦酒

「日本人として、商売人として、一度は。」
と思っていた讃岐の金刀比羅さんへ参る。

18きっぷでガタゴトと鈍行に揺られ、緑溢れる聖地に辿り着く。
猛暑の日照りのせいで視界が揺らぎ、
名物の石段が永遠に続くかのように見える。
木陰に逃げながら石段を登り、御本宮の前に佇んだときは汗だく。

でも、上ったかいがあった。
おみくじは「大吉」。
にこやかに下り、温泉で汗を流して金刀比羅さんにバイバイ。
阿波踊りへ向うため、吉野川に沿って走る路線に乗り込む。

鉄道の旅は、ビールと、ご当地おつまみ。
香川は魚系の肴が豊富。
そして欠かせないのが「旅にはポッキー」。
大吉を祝して、さぬきビールで乾杯。
夏の緑の中、列車に揺られて呑むビールの味。
でも、半分くらいはシチュエーションの美味しさ、かな。

鉄道の昼酌は眠気を誘う。
うどん屋2軒まわって、温泉入って、ビール呑んだら
そりゃ当然か。

晴れの讃岐の夏景色、眠気とともに夢の中。


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古碧添エ

この街に住みたいと思った理由のひとつに、骨董屋の多さがある。

「道具屋 広岡」さんは、うちから自転車で北山通りを
5分ほどすいっと行ったとこにある骨董屋さん。
古伊万里中心の品揃えが、お店の凛とした雰囲気を保ち、
だけれども静かで暖かい時間が流れる場所。

高いものは買えないけれど、安くてかわいいものを
見つけられれば嬉しい。たった2000円ほどの小さな贅沢が、
晩酌の時間を一生引き立ててくれると思えば。

最近、青い器をご注文いただく機会があった。
夏の涼を求める心の成せる念か、自分も青い釉薬を
試してみたく、頭をひねる日が過ぎる。
自分の中にはまだ見えぬ理想の碧色が、「広岡」さんで見つけた
小さな染付の中に見えるかもしれない。

そんなことを考えながら、
渋碧の蕎麦猪口にコロリと氷を浮かべて梅酒を嘗める夜。


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玉子煎餅ノ夜

雷と晴間がドラスティックに交錯する古都の空。
そんな空のもと、今年の祇園祭はピークに。

そんな今日の日中、札幌と名古屋からのお客様が
工房にお越し下さり、楽しく呑友の契りを。
(まろさん、ビュゼ開けちゃいました、ごちそうさまです)
やっぱり呑み喰いが好きな方と話すのは楽しく、忘時の後悔。

宵山へと向かわれるお客様を見送ったあと、
やはりウズウズして、夜7時を過ぎて、結局追いかけるように街中へ。
(むーさん、どこかですれ違っていたかもしれません)

夕立後の涼風のせいか、山鉾の灯りは澄み、
人ごみで蒸す路上とは対照的。
でも、小さな路地へと一本入ると、祇園祭りならではの
民家のお宝公開が楽しめ、キモチ豊かに歩ける。

そのお宝と提灯を肴に祭り屋台を巡る。
なかでも「たまごせんべい」という食べ物を
初体験できたことが、今夜の収穫。
えびせんべいにソースをたっぷりぬった後、
天かすを散りばめ、ハート型の目玉焼きをのせ、
マヨネーズをかけて下品に頬張る。
なんともチープなこの食べ物にウキウキしながら
ほろ酔いで楽しむ宵山の夜。
祭りはいいなあ。


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Profile

Ren Uehara :
Born in 1974. In the mid-1990s, my artistic activities centered on Editorial design with computer. And after being involved in GUI design on video-games. Now I create ceramics in Kyoto, named "Koyoido". Because I love sake, Koyoido make sake set, tableware in the present life to create more joyful time to drink. I write down my drinking life in this blog.