Top page | 2006年07月




赤ト黒

その流暢な語り口のダンディな男のひとのことを、
「うまく説明できない」と言うことがうまい説明だと思う。

様々な知識を持ったその人のことを、
話す前はキンキラリンのセレブだと思ってた。
でも、BMWに乗ってきたその方と最初に盛り上がった話は、
「どこの『餃子の王将』が美味しいか」。

突然、うちに8本もワインを送ってくださった
その不思議な人が用意してくれた夜は、
お仕事場の近所で買ってきてくださった、
西京極「ポワロ」のバジリコフランスから始まった。

失礼を承知で、あえて書こう。
正直、「安(やす)パン」の晩酌である、と。

でも、その100円台のパンとは思えないバジリコペーストの味。
上品な芳香とかそんなではない、旨味というものをしっかり感じる。
そして、隠し球として出てきたのが、イカスミ&明太子フランス(写真)
という、よくわからないセンスのパン。
でも、その肴に成り得るイカスミや明太子が(具というよりも調味料として)
ソフトフランスにのると、コテっとしてるけれど、
妙にまとまりのあるいい味になってしまうのは、スタンダールもびっくりである。
おしゃれーで高級なブレッドじゃない、コテコテの味が表現された惣菜パン。

実は8本のワインも平均500円。
そのひとは、その夜、単純に高ければいいというような
田舎ものの考え方ではなく、安いもので、美味しい時間を過ごす
というセンスを教えてくれた。でも、それはめっちゃいいものを
知ってるからこそできる考え方。
いいオトナとは、ということを改めて考えさせられた時間。

値段や名前だけで、ものごとを判断する勿れ。
自分の感覚を鍛え、信じよう。
カッコよく、ステキなオトナになるために。


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南北併セ

詠み歌やお茶の世界ではタブーなのかもしれないけど、
今回は、北と南から同時に到来物があったので、
「南北併せ」を楽しませていただきました。
後藤様、山下様、ありがとうございました。

酒は山形米沢・新藤酒造店の「裏・雅山流(がさんりゅう)香華」。
味は、びっくり。えっ?というカンジ。
言ってしまえば、お酒の好きな人には物足りない味。
つまりは、かーっと来ない。そしてそれこそがこのお酒の醍醐味。
口に含んだ時に、フルーティーな旨味を感じるとこまでは、
「十四代」に代表されるような旨口系のお酒と同じ。
だけど、この「裏・雅山流」はそこから水のような飲料になる。
お酒というよりもカクテル。秘里の涼水のような味。

はじめて「つばさ」に乗って山形へ向かう、
白銀の奥羽本線。峠中の白に包まれた無の世界。
「何もない」ということがある、と感じた
あの雪景色を思い出しました。
この味は、あの景色を知っている人にしか作れないのかもしれない。

そして肴は福岡の辛子明太子。
あの小さな粒をみみっちく啄ばむというのは、
まさに酒肴の醍醐味そのもの。

綺麗な南の赤と北の白をイメージしつつ、
故郷をたくさん持つことの幸せを実感した夏の夜。


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酌ノ意

ニッポンには「酌(しゃく)」という言葉がある。

「酌む」というのは、お互いにやりとりするということ。
そう、それはお酒であったり、気持ちであったりするわけで、
ひとが働いて生きていくということは、
恨み辛み親しみ愛しさ、色んなものを酌み交わしていく、ということ。

ひとりでも、誰かと一緒でもいい。
宵の刻、お酒をちびりちびりと呑むことが、
今日一日の酌み交わしたものを素直に受けとめるフラットな時間になる。
それが、「晩酌」というとき。

京都に居を遷してから、ほっと一息。
「晩酌」という、小さな盆に収まる程の
ミニマムな食と酒、器の世界(時間)を
ちょっとだけ綴ることにしました。


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