雨ノ酒呑童子
神無月は、八百万(やおよろず)の神々が出雲大社に集まり、
各地に神が不在になるということからついた月名。
その神無月一日、神は出雲への道すがら、
雨風とともに京の都に三人の酒の使いを遣わされた。
酒の使いの開口一番、
「今日はお酒の日だから、お酒を呑まなきゃいけないんですよ。
なぜ、今日がお酒の日かは忘れたけど。」
昼にすでに二種類のワインで顔を赤く染めていた
自分の前に注がれる美酒は、
「奈良萬」のひやおろしと「北錦」の火入れ。
そして「鳳凰美田」で漬けた手製の梅酒。
酒の使いたちは、眼を輝かせ、酒について語り合う。
大のオトナが、この何の変哲もない透明の液体に
人生を照らし合わせる。
オトナって、ばかだなあ。
人間って、素敵だなあ。
ふわりと酔いながら、
呑食に関わる仕事をしていることを
誇りに思わせていただいた時間。
しんみりと心の中で「感謝」。
使いから授かった美しい飴色の梅酒は、
今日もゆっくりと、こう諭すように喉に流れ込む。
「酒は必需品ではない。でもやはりそこに酒は在り、呑む者たちが居る」
