17歳の盃

初秋のある日、小さな今宵堂の工房に、
大阪・金蘭千里高校より20名の
高校二年生のみなさんが遊びに来てくれました。

これは「京都カラスマ大学」さんのコーディネートによる、
京都の様々な仕事の現場を訪ねてみよう!という郊外学習企画。

「酒器」作りを生業とする私たちですので、
未成年のみなさんと「お酒を呑む」ということについて、
一緒に考えてみることにしました。

まず、盃と片口を使って「お酌」を体験。
残念ながらお酒ではなく、お水でしたが、
「おーっとっと」「まあまあまあ」なんて言いながら、
盃を満たし、若い声で「乾杯!」と授業はスタート。

「お酒」とは。
お酒が促す「酔い」とは。
お酒を口に運ぶ「酒器」とは。
そして、「未成年は呑んじゃいけない」なんて言いながら、
なぜ大人はあんなに嬉しそうにお酒を呑むのか。
酒器のことや晩酌を愉しむ「小さな幸せ」について、
私たちがやってきた仕事を通して感じていることを、
少しお話しさせていただきました。

そして、今回は17歳のみなさんに、
三年後の未来ために、つまり二十歳になった時に使う、
「盃」という大人のための器を
手びねりで作っていただくことにしました。

大きさや容量を気にしながら作るひと。
真剣な眼差しで表面を綺麗にしていくひと。
盃を超えたアートを展開するひと。
「これネコ?」「2コ作ったの?」「これ呑めないよね?」
不思議な会話が生まれる中、授業の終わりには、
二十人二十色の楽しい盃たちが並びました。

数日後、生徒のみなさんひとりひとりから、
丁寧なお手紙をいただきました。

「お酒というものについて初めて考えた」
「早く自分の盃でお酒を呑んでみたい」
「夫婦っていいなぁ」という言葉や、
「大きな夢を持って小さな幸せを感じたい」というのはかわいい女の子たち。
中には、間近に迫る受験や日々の生活のこと、小さな不安も垣間見えました。
進路について考える微妙な高校二年生の秋だったのでしょうね。
私たちも、同じようにそういう時期を過ごしたことを思い出しました。

この授業の後、
私たちが盃を初めて持ったのはいつだったのかな、なんて考えたりしました。
そして、果たして大人になんてなったのかな?とも。

大人は、たぶん、大きくなった子どもです。
嬉しい時も、ちょっと寂しい時も、お酒を呑んで
かわいく「酔い」に甘えたいのですよね。

ようやく焼き上った盃たち。
今の感想も、三年後の呑み心地も楽しみです。
みなさん、二十歳になったら、どうぞ酔い祝杯を。




3件のコメント

  1. 素敵な日記ですね

    拝読させてもらい、こちらまで暖かい気持ちになりました。

    そして、素晴らしいお仕事をされていらっしゃるんだなーと
    改めてれんさんを思いました。

    ちゃんとお礼状を書く生徒さんや、指導されている先生も
    素敵ですね。

    大きな・・・小さな幸せ
    気にいりました^^

  2. ひとの幸せの形は色々ですよねー。
    「お酒」を呑むという幸せもまたひとつ。
    私たちはたくさんの呑兵衛の方に出会えたから、
    その幸せが素敵なことだと感じます!

  3. シュンさん、コメントをありがとうございます。

    生徒さんたちの3年後、私たちも楽しみに待っています。
    「二十歳になったら、酒器を見に今宵堂さんに行きます!」
    という、うれしい予約に微笑んでしまいます。

    大人は早速、酔い秋を満喫したいですね。

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