『酔わせてみせようほとゝぎす』

幾分のんびりとした佇まいの桜の蕾を眺めつつ、
今か今かと花見酒が恋しい季節。

きっと桜も見頃な、4月初めの4日(火)から、
京都・三条富小路「ギャラリーH2O」さんにて
今宵堂の春の酒器展が始まります。

テーマに合わせて、会場が変身するH2Oさんでの展示。
前々回の展示『BAR 2C2H5OH + 2CO2』は、
BARをテーマに、白いカウンターが会場に現れ、
カクテルの名前をつけた酒器たちが並びました。

前回の『男と女のババンバ・バンバンバン♪』では、
暖簾の向こうが如何わしい「銭湯」になり、
お客さまに男湯と女湯に分かれて入場していただきました。

さてさて、今度の展示はいかに?
タイトルは、

今宵堂の酒器展
『酔わせてみせようほとゝぎす』

春爛漫、桜満開のこの季節ならば、
やはり「花見」の場を作ろうと思い立ちました。
でも、ただの花見ではなく、
戦国の世を治めた太閤秀吉が催した
一世一代の大イベント「醍醐の花見」が今回の舞台です。

実はこの「醍醐の花見」、
桜を肴に呑み喰いを楽しむ
現代の「花見」の先駆けなのです。

それまでは、貴族階級が優雅に歌を詠むなど、
伝統行事としての趣が強いイベントでした。
しかし、晩年の秀吉がその権威を見せつけるために
この盛大な酒宴を催したことで、これが庶民の間に広まり、
「花見」=「お酒を呑んでドンチャン騒ぎ」という
愉しい文化が根付いたといわれています。

京都の醍醐寺に1300人が招かれた大宴会。
秀吉の有終の美を飾るこの催しは、
天下人が私たちに残してくれた遺産でもあります。

桜も酒も人の心を酔わせるもの。
その酔いは万人に等しく舞い降りて、
束の間の夢見心地の中、いつの間にか散っていきます。

みなさまにもひとひらの酔いを味わっていただけますように。

今宵堂の酒器展 『酔わせてみせようほとゝぎす』
2017年 4月4日(火)〜 16日(日)
12:00 〜 19:00 月曜休 ※ 最終日は17時まで
会場 / ギャラリーH2O
    京都市中京区富小路通三条上ル福長町109
電話 / 075-213-3783

※ こちらからDMをご覧になれます。

三畳一間の展示室


松の内が明けるころ、
滅多にない大雪に見舞われた京都の街。
そして、真っ白な雪化粧をした鴨川のように、
今宵堂も少しばかり、衣替えをいたしました。

うちは、築約80年の小さな町家。
大家さんが手塩にかけて愛おしんでこられたおかげで、
十年間、その姿のまま住んできました。
しかし、今回、玄関先の小さな展示室である
三畳間の床を張り替えてみることにしました。

私たちの十年目の小さな衣替えを
引き受けてくださったのは、
友人の建築士「STAGE」の毛利さん
腕利き大工「小山建築」の小山さんと弟子の和馬くん。

そして実は、張り替えのための床材を、
毛利さんが不思議なご縁で手に入れてきてくれました。

現在、京都市内で作られる「やきもの」は、
主にガス窯や電気窯で焼成されています。
昔は登り窯による焼成が主流でしたが、
昭和46年に市内で大気汚染防止条例が施行され、
煙を排出する薪が焚けなくなったことで、
次第に登り窯は役目を失い、姿を消していったそうです。

昨年まで、京焼の産地・五条坂界隈には
5基の登り窯が京焼の遺産として残っていました。
しかし、その内の1基「井野祝峰窯」が
人手に渡ることになりました。

井野祝峰窯は、江戸時代の後期に築かれた登り窯。
陶工たちの共同窯としても活用され、
私たちの憧れの名工やお世話になった恩師たちが、
腕を磨き、数多のやきものを生み出してきたと知りました。

そして、窯道具のひとつに「桟板」があります。
轆轤でひいたものを載せ、削り出したものを載せ、
釉掛けするものを載せ、窯に詰めるために載せて、
窯から出したものを載せて・・・、
つまり、制作の過程でひたすら「載せる」ための板です。
桟板に触れない日はなく、傍らにはいつもあるもの。
材質は、ほぼ杉。うちにも30枚常備しています。

下りが長くなりましたが、
一年前、人手に渡る前の祝峰窯の桟板を
毛利さんが譲り受けてきてくださって、
それを大工の小山さんが床材として加工してくれたのです。
ただ単に張るだけじゃつまらない、
何かこの空間にストーリーをとの粋な計らいなのでした。

小山さんのお仕事は、とても丁寧。
桟板の木目の美しさを残しつつ、
きれいな仕上がりの床が生まれました。
ちょっと悪戯で瓢箪を隠したりなんかして・・・。

白木の床板は、工房の雰囲気に合わせて色を纏い、
改装したとは思えないほど、しっくりと馴染んでいます。
無垢の杉板のあたたかみもじんわりと伝わってきます。

10年前に夫婦ふたりで始めた今宵堂は、
歴史や伝統を担うような工房ではなく、
私たちの作るものもいわゆる京焼でもなく、
ただ好きで暮らしているこの街の景色を見ながら
作っているだけの小さなお猪口屋さんです。

しかし、20代の頃に貪るように探った古い京焼の姿と
自分たちの若い情熱を、この床板は思い出させてくれました。
今は、うれしいことにたくさんのご注文や
企画のお仕事をさせていただいていますが、
10年前は、どこに流れるか分からない心持ちで、
必死に古き良きやきもの達を凝視していたように思います。
こちらは、工房を始めたばかりの展示室・・・。

あの頃、美術館や書籍で触れたやきものの中には、
井野祝峰窯で生まれたものもあったかもしれません。
「登り窯」の時代は、もう過去でしょうか。
でも、その窯にあった歴史の断片は、
この小さな工房に残ってくれました。
これから、古の陶工たちの残り香を感じながら、
淡い浪漫を抱えて、より酔い酒器を並べていきたいと思います。

美味しい盛岡慕情

東北はもう冬支度を迎えている模様ですが、
のんびり綴る、初秋の東北紀行は続いておりますー。

四度目の来訪となった盛岡。
この街もまた胃袋をぐっと鷲掴みにする、
美味しいものが詰まっている街です。

盛岡駅に降り立つと、真ん前に君臨する「盛楼閣」。
まずは、洗礼的に食べたくなる盛岡冷麺を。
といっても、こちらは焼肉屋さんな訳でありまして、
お昼時といえども、一皿くらいジュジュっと炙って、
一杯ひっかけちゃうのが醍醐味というか、礼儀でございましょう。
冷麺に添えられる季節の果物は、まだ西瓜。
秋の梨もいつか出会ってみたいものです。

そして、盛岡の呑み屋街といえば、桜山神社の参道!
鳥居の内側に昭和の趣を漂わせる灯りが並んでいる様は、
吞兵衛の旅情を掻き立ててくれます。

ここにある「じゃじゃ麺」の名店が「白龍」。
盛岡冷麺、わんこそばに並ぶ盛岡三大麺のひとつですが、
店内はその偉業感を全く感じさせない、大衆食堂的な佇まい。
ただ「じゃじゃ麺」はかなりの異彩を放つご当地麺です。

供された皿の中の辛味噌と麺と絡め、
ラー油、ニンニクや酢で、自分好みの味に仕上げていきます。
更に麺を食べ終わった後は、器に卵を割りいれて、
お店の人にスープを入れてもらい、
〆の「ちいたんたん(鶏蛋湯:玉子スープ)」を作ります。
三年振りに再会した、この魅惑のセミセルフ仕立て。
辛くてあまり麺を食べられなかった娘には、
そっと飴を差し出してくれる店のおばちゃん・・・。
こんな岩手の人々のやさしさが、
楽しい子連れ旅を支えてくれました。

そして、盛岡のソウルフードといえば、
なんといっても「福田パン」。
焼きたてのコッペパンに具をチョイスして挟んでもらうという、
このシンプルかつ例を見ない臨場感がたまりません!
滞在中、朝食をこのパンに捧げようと誓った甲斐あって、
4泊中3パンを達成。
連日通ってもネタが尽きない具のバラエティさ。
名物「あんバター」も最高ですが、
うちのイチ押しは「レンコンしめじ&照り焼きチキン」のハーフ&ハーフ。
娘は「いちごミルク」一辺倒で毎食一本。若いってすごい。

街の中には、のんびりと木陰で寛げるパン食スポットが点在します。
盛岡城址公園で、妹家族と過ごした福田パン時間も
ほっこりとした思い出。ちなみに、酪農大国なので牛乳もおいしい。

そうそう、三年前に盛岡でトークイベントをご一緒した
木村衣有子さんの新刊『コッペパンの本』の巻頭にも、
「福田パン」がじっくり載っておりまーす。

展示会初日の夜は、酒場好きに成長した娘を連れて、
盛岡のみなさんや遠方からのお客さまもご一緒に、
桜山「MASS」さんの二階へ大集合。
大人14名に子ども5名といったカオスを確信する子連れ率ながらも、
快く引き受けてくださったMASSさんに心より感謝です!

子どもたちの嬌声が飛び交う中、
今をトキメク「遠野のどぶろく」を啜り、
盛岡の地での大宴会にしみじみいたしました。

MASSさんでは、うちの猫酒器たちも
ニャーと仲間入りさせていただいております。
お昼から旨い燗酒呑める、旅人にもたまらんお店ですよっ。

明る夜もまた東京からご来訪!のお客さまとの宴。
盛岡のわんこそばの老舗「東家」さんのプロデュースによる
Dining&Bar 九十九草」さんにて。
今回の猫展に合わせて「猫のお酒を、猫の盃で」と称して、
会期中、特製猫ラベルのお酒「にゃえもん」(川村酒造店)を
今宵堂製「ねこ盃」で出してくださいました☆

実は、この日のお昼ごはんは、
本家「東家」さんで「カツ丼」を。
サラリーマンや近所のおじいちゃんも続けざまに「カツ丼」!
「東家」といえば、「カツ丼」も旨い!そうで、
蕎麦出汁が染み込んだニ段重ねの厚いカツがたまりません。
街の人に愛される、街の飯処としての蕎麦屋に
小さく感動してしまうのです。

この日の梯子酒は再び桜山へ戻り、
かもし処 陽-SUN」さんへ。
ファンクな店長さんが醸してくれる雰囲気に
肴と酒のこだわりがキラリと光ります。
旅酒の良さを感じるのは、酔いお店のカウンターで
しみじみと杯を傾ける瞬間。
またゆっくりと訪れたい一軒に出会えました。

どうしても行きたい場所、というものがどの街にもあるものですが、
中津川の畔り「喫茶 carta」さんは、盛岡でのそのひとつ。
静かな空間で所々に置かれた本をめくりつつ、
珈琲とサンドウィッチで過ごすゆるやかな時間。
心に留まったのは、かぼちゃスープの漆のお椀。
漆器の持つ和的なイメージよりも、
その滑らかな肌合いとシンプルな形がとても印象的でした。

盛岡を発つ日のお昼は、
駆け込むように「中華そば・中河」さんへ。
お母さんと息子さんだけで営まれている、
街の小さなお店ながらも、地元の方から旅人まで、
ここの一杯を求めて暖簾をくぐる人が後を絶えません。
どこか静謐な空気の店内にお品書きは「中華そば」ひとつのみ。
娘の箸も止まらない優しい味。
どこかにあるようで、見つけられない、そんな大切なお店です。

盛岡の食を色々楽しんだこの旅。
ふと思い起こすと、その食からは、
なんだか穏やかな人の佇まいが浮かびます。
落ち着く街の風情は、
やはり旅先で触れ合った人の優しさから
醸し出されていたように思います。

また小さな酒器をひっさげて、
この街に帰ってきたいなと思います。

炬燵で丸くなる季節へ

先日終了いたしました盛岡「ひめくり」さんでの、
「猫」をテーマにした展示『吾盃ハ猫デアル』
今回、ご挨拶文としてこんな文を綴りました。
(写真をクリックすると大きくなります)

抱きしめたくなる愛らしさを持ちながらも、
その佇まいから醸し出される憂い、
なんだか酸いも甘いも嘗め尽くしたような渋さ。
そう、猫って「可愛い」だけではない。

愛らしさの中にも侘び風合い、
遊んだデザインにも骨董然とした肌合を。
そう心がけながら、
あとひと手間を添えようか、しばし筆を置くべきかと、
途中で何度も立ち止まりながら進めた制作でした。

ニャーと焼きあがってきた器は、
こんな猫たちになりました。

「山猫徳利・山猫猪口」
帽子をとれだのお絞りで手をふけだの、
色々と「注文の多い」酒器でございます。
岩手生まれの彼の文豪へのオマージュです。

「猫騙シ盃」
十二支の逸話から。
鼠に騙されて一日遅れで行った猫は、
干支に入れず盃の裏に・・・。
終電を逃さないようにとの戒めでもあります。

「猫額皿」
猫の額ほどの僅かな肴でも、
ちびちびつまみながら
ほどよく秋の夜長は更けてゆきます。
塩でも豆でも切れっ端でも、
みみっちさもまた旨いのですよね。

「小判箸置」
表は「千万両」、裏は「無一文」
呑みすぎて、ひっくり返ってスッテンテン。
猫に小判といいますが、
吞兵衛が小金を持つと酒に消える・・・。

「注器(チューき)」
猫と対をなす宿命を背負った鼠。
きらわれものですが、
たまには目線や酒も注いであげたい。
でも呑み過ぎにはごチュー意を。

「ニャン徳利」
大衆酒場の徳利として愛される
口元に膨らみを持たせたこの形状。
こぼれやすいので、
徳利をおちょこにくっつけて注ぐのが酒呑みの流儀。
その姿はゴロニャーンと甘える猫の様。

「猫飯碗」
呑んだ暮れ、〆には白飯、鰹節。
今、うちの娘のご飯茶碗はこれでございます。

(ほかの器や展示の様子は、facebookページのアルバムをどうぞ。)

会場の「ひめくり」さんは気持ちいい中津川沿い。
ガラス越しに眺める川原の景色は三年経っても変わらず。
この光の中で、お店に並ぶ手仕事の品々を
ゆっくりと手に取ることができます。

店長の美帆さんの優しくうれしい気配りに甘えながら、
私たちも在店時間を楽しく過ごさせていただきました。
ちなみに、美帆さんのおうちの猫ちゃんの名は、
「ひめ」と「くり」!
ひめくりさんのTwitterでときどきグラビアが載ってます。

「ひめくり」というお店で何かいいものを見つけたい、
そんな思いでご来店されている地元の方々の気持ちを
ひたひたと感じた在店二日間。
うちの酒器たちもニヤリと楽しんでいただけたかな・・・。

そして、京都、東京、福島、仙台などなど、
遥か遠方からも盛岡へ足を運んでくださったみなさま、
目頭熱く、ありがとうございます!
みなさんの酔い盛岡散歩のお話も楽しかったですっ。

季節はあっという間に流れて、
京都も秋深く、盛岡は初冬の気配でしょうか。
猫も炬燵で丸くなる、そんな夜にそっと傍に転がる
酒器となってくれますように・・・。

今宵堂ノ酒器展『吾盃ハ猫デアル』

京都の夏は、送り火まで。
暦の上での決まり文句と思いきや、
なんとなく風の色が変わる8月末。

工房は、初秋の盛岡での展示に向け、目下制作集中期。
仕事しつつも、旅先の旨いものに思いを馳せてしまいます。
「福田パン」の具、何にしようかな・・・。

北海道に次ぐ広大な土地、みちのくの自然の中で、
力強いものづくりを発信している岩手の文化の中枢。
盛岡は、郷土の味わいと洗練を感じさせてくれる、
大好きな街です。なんだか自分たちの住む
京都にも似ているような感じもするのです。

展示会場は、中津川のほとりに佇む
ギャラリー&ショップ「ひめくり」さん。
三年前、「馬」をテーマに酒器展をさせていただいたときは、
うちの娘もヒヒーン☆とまだ四つん這いでした。
展示の様子はこちら

三年を経て、娘は二足歩行になりましたが、
今回のテーマは、馬から「猫」へ。

猫は、馬と同じように、
古代から人間ととても近い場で暮らすいきもの。
その飄々とした仕草ゆえ、書き手作り手の妄想をかきたて、
古今東西、数々の創作のモチーフとなってきました。
今回は、その猫たちに酒卓へとピョンと降りてきてもらい、
その愛くるしい威をちょいと借りることにいたしました。

今宵堂ノ酒器展『吾盃ハ猫デアル』。
秋風にヒゲを揺らして、
盛岡でお待ちしておりますニャ。

今宵堂ノ酒器展 『吾盃ハ猫デアル』

2016年 9月9日(金)~ 20日(火)
    10:30 ~ 18:30(最終日は16:00まで)
    木曜/第一・第三水曜定休
会場 / shop+space ひめくり
    盛岡市紺屋町4-8(深沢紅子 野の花美術館となり)
電話 / 019-681-7475

※ こちらからDMをご覧になれます。
※ 今宵堂は、10日(土)・11日(日)に会場に在所いたします。

●「猫のお酒を、猫の盃で」
盛岡のわんこそばの老舗「東家」さんのプロデュースによる「Dining&Bar 九十九草」さん。お蕎麦をアレンジしたものなど素敵な創作料理が揃うこの酒場で、会期中、特製猫ラベルのお酒「にゃえもん」(川村酒造店)を今宵堂製「ねこ盃」で呑めるんだニャ~。

いつも心にウキウキを☆

鴨川の水面を覗くと、おたまじゃくしがスイスイ。
ケロケロと鳴く夏の音を聴きながらの晩酌もそろそろ。
ちなみにこちらの酒器は「蛙猪口猪口(かえるちょこちょこ)」。
帰る気配のない酔客に暇(いとま)を促すのにも使えます。

先日4日をもちまして、福岡・とどろき酒店さんでの展示
『ウキウキ★サカヅキ』をうれしく終えさせていただきました!

ウキウキ、フラフラ、ウツラウツラにチリンチリン。
日本語の中には、とてもたくさんの
オノマトペ(擬音語・擬態語など)が息づいていますね。
「楽しくて心が浮かれてしまう」という気分を、
「ウキウキ」という言葉の綴りで表現する面白さ。
目下、日本語学習中のうちの三歳児も、
なかなか達者に使っております。
今回の展示は、この初夏の浮き足立つような気分を
オノマトペとともに小さな酒器たちに込めてみました。
(展示の様子は、facebookページのアルバムをどうぞ!)

福岡の吞兵衛さんたちのみならず、ご遠方からのみなさまも
テクテクと足を運んでいただき、心よりお礼申し上げます!
クルクル回る徳利もソワソワしちゃう可盃も、
みなさまにクスクスと笑っていただけて酒器屋冥利に尽きました。

そして気持ちいい初夏の日曜の「泡☆タイム」は、
会場はワイワイ・ガヤガヤと楽しい角打ちとなりました。
この日のために春吉の「うわのそら」さんが肴をご用意してくださり、
シュワシュワなお酒たちでゴキゲンなひとときでした!

会場の「とどろき酒店」さんに立たせていただいた二日間。
それにしても、酒屋さんとは、なんともおもしろいところ。
一升瓶を惚れ惚れするほどドンドンと仕入れる呑み屋さん、
イソイソとお気に入りの銘柄をレジ台に置くおじさん、
店員さんにオススメの銘柄を尋ねるカワイイおねえさん。
いかなるシーンで呑まれる酒か、
ちらりと盗み見しながら、ついつい夢想してドキドキ。
キャラの立った「とどろき酒店」のスタッフさんたちの
楽しくフワフワと軽やかな雰囲気もとっても魅力的でした。

京都から福岡へと河岸を変えた「捏製作所」さんにも
やっとおじゃまできました。
ヴァン・ナチュールも加わった新しいメニューにワクワク。

捏製作所さんのお座敷にて、宴にまみれたうちの娘も
「おおさかに〜は、う〜まいもんがいっぱいあるんやで〜」
の歌をニコニコと披露しておりました〜。

お酒っていいな、楽しいな。
やっぱりお酒は楽しくウキウキと呑んでまいりましょう~。

今宵堂の酒器展『ウキウキ★サカヅキ』


鴨川を吹き抜ける風に揺られ、川面が輝く新緑のとき。
うちの娘もお日さまの下へ駆け出してゆきます。
河原でのちょいと一杯も恋しくなる季節ですね。

気持ちも軽やかに、今宵堂10周年最初の展示を
福岡「とどろき酒店」さんでさせていただきます。

娘が好きなアニメの主題歌をききながら
思いついた展示のタイトル。
ウキウキ、ドキドキ、フワフワ、スイスイ、フラフラ。
初夏のこの気分は、たくさんのオノマトペとともに。

とどろき酒店さんは、旨いお酒とワインが目印。
素敵なイベントなどもたくさん仕掛けて、
吞兵衛心をくすぐる面白い酒屋さんです。
三年前の展示の際に撮った、
今宵堂の日常の映像もご紹介いただいてますー。
懐かしいですね。

私たちは、14日・15日に在廊させていただきますが、
なんと、15日は本場・九州ならではの「角打ち 泡☆タイム」
ほろ酔い気分で酒器を眺めていただけますとうれしいですー。

いざ、ニッポンの西海岸へ!

今宵堂の酒器展 『ウキウキ★サカヅキ』
2016年 5月14日(土)~ 6月4日(土) 10:00 ~ 19:00 月曜休
会場 / とどろき酒店  福岡市博多区三筑2-2-31
電話 / 092-571-6304

※ こちらからDMをご覧になれます。
※ 今宵堂は14日(土)・15日(日)に会場に在所いたします。

「角打ち 泡☆タイム」
5月15日(日)の13時〜17時まで、会場のとどろき酒店さんの店内にて、予約不要の立ち飲みタイムを開催いたします!初夏らしく、微発泡ニホンシュ「CO2」や発泡系のお酒を中心に日本酒・ワイン(10種類くらい)を500円〜。春吉「うわのそら」さんがうれしいおつまみもご用意してくださいます!ウキウキとお立ち寄りください。

ほろ酔い十年


2006年、春の陽射しと北風が交ざり合う頃、
私たち夫婦は、鴨川近くの小さな町家から
結婚生活を始めました。
古びた教会で式を挙げたのは、3月21日。
この日が「酒器 今宵堂」の出発だと思っています。

「毎日、晩酌をしよう。」
結婚と同時に酒器屋を歩み出した私たちの誓い。
この言葉の蓄積こそが、
まさしく私たちの十年間でした。
この写真は、ふたりでした最初の晩酌。
なんだろう?きんぴらだったかな?

大仕事を終えてほっとしたときも、
せっぱ詰まった〆切前も、
ハレの日もケの日も。
夕飯前のほんの一杯とささやかな肴で、
おつかれさまを交わすこと。

でも、仕事や子育ての慌ただしさは容赦なく、
手の込んだ肴作りは面倒な時もあります。
ならば、肉屋のコロッケや
スーパーのお総菜でもいいんじゃない?
こんな「買ってきた肴」がよく並ぶのが、
今宵堂の「晩酌帖」

素敵で丁寧な酒卓ではないけれど、
そのかわり無理もありません。
そして、街での肴探しが好きになるきっかけにもなりました。
初めてそういう晩酌の写真を撮ったとき、
それがいいのよ、と後押ししてくれた人生の先輩や
その写真を楽しんでくださった吞兵衛さんたちに
あらためて感謝です。

酒器屋を始めた当時、
銘柄も呑み方もそれほど知らぬ私たちに、
お酒のアレコレを教えてくださったのは、
工房を訪れてくださった吞兵衛のお客さまたちです。
今、定番として作り続けている酒器の多くは、
お客さまとのやりとりを介してできたものばかり。

「ハート盃」は、三重の蔵元杜氏と新潟の蔵の娘さんの
ご結婚のお祝いの器として生まれました。
「結婚」という幸せの形を
どうやって日本酒の盃にするか、
ふたりで楽しく考えたものです。
ハートという甘いモチーフのフォルムは、
そっと口付けを促すようなやさしい口当たり。
白瓷ならではの持ち味となりました。

「白瓷片口」は、東京の居酒屋さんのご注文でした。
お酒が入る容量というものをちゃんと意識し始めたのは、
この片口からかもしれません。
やきものの味わいだけではなく、
酒器屋としての成長を促された器。
やや楕円気味にすると持ちやすく、
女性のお酌もすんなりと。
でも、まだ今も試行錯誤が続く片口の奥深さ。

一合ではなく、半合でなるべくいろんなお酒を楽しむ、
という酒場のムーブメントも器は追いかけます。
うちで作っている「蕎麦猪口」は、
江戸時代初期に多い小振りのもの。
半合出しをされている飲食店さんからのご注文で
できあがったサイズです。

「白瓷平盃」は、吞兵衛夫妻のご結婚の引き出物として、
それまで作っていた平盃を見つめ直しました。
お二人の酒への愛と経験から、
平盃の大きさや佇まいが定まりました。
シンプルだからこそ、細部にこだわる、
そんな酒器作りの在り方を学んだ気がします。

この平盃に金魚の絵を描くようになったのは、
お客さまから教えていただいた「長崎の魚石」という民話より。
魚石(ぎょせき)という石の中で金魚が泳ぐお話ですが、
魚石→うおいし→おいしい、との繋がりで、
料理屋の屋号にも多いそう。
磁器の盃の中で泳ぐ金魚を眺めて一献。
ちなみに、金魚が泳げるほど薄い酒を金魚酒と呼びます。
酒言葉で遊ぶ楽しみも覚えました。

そして、晩酌だけでなく、街で「呑む」ことの
楽しさを教えてくれたのは、酒場通の師匠。
連れられて知った京都の大衆酒場、
そこに凛と並んでいたのは、大量生産の酒器たち。
中でも「徳利」はなんともいえない素っ気なさ。
そしてそれゆえの艶っぽさに大いなる感銘を受けました。
今宵堂の「燗徳利」は大衆的なものへの郷愁に
ほんのりと手跡を残していくことを意識しつつ作っています。

まだまだ数えきれないほどの酒器の成り立ち。
思い起こせば起こすほど、私たちは、
お客さまに「酒器屋」にしてもらったんだなあとしみじみ。
今はちょうど、初心な頃を少し過ぎて、
酒のあれやこれやを舐めながらの
ほろ酔い気分といったところでしょうか。

そういえば、工房の玄関にある小さな窯で、
この十年で925回の窯たきをしました。
そこから生まれたたくさんの酒器たちが、
吞兵衛さんの手元できょうもお酒に浸っているかと思うと、
こんなに幸せなことはありません。

朝、保育園へ娘を送ってから、仕事へ入ります。
「おちょこつくってる」ことを感じ始めた三歳児。
「おしごと、がんばってね。」と声を掛けてもらった日は、
なんだかウルっとうれしいものです。

こうして、今日もふたりで工房に立ちます。
この一日に、心よりありがとうございます。

「缶つま晩酌暦帖」

パカっと開けて、そのまま酒卓へ。
おつまみのための缶詰、「缶つま」。

「広島県産かき燻製油漬け」
「有明産赤貝どて煮風山椒入り」
「鹿児島県産赤鶏さつま炭火焼」

などなど魅力的なお酒の供に特化した、
まさに吞兵衛のための缶詰です。

実は、素材と製法にとことんこだわったこの缶詰、
水産物なら、水揚げからの時間をなるべく短縮するべく、
工場のおばちゃんたちの手作業で作られています。

銀座「ROCK FISH」のバーテンダー・間口さん監修のものや、
時には1缶数千円もする高級おつまみなど、
バラエティに富んだラインアップ。

大人の遊び場と題された「缶つま倶楽部」のサイトでは、
「缶つまジャズナイト」「K取部長酒場放浪記」など、
ユーモアに溢れた楽しい缶つまワールドが広がっています。

「たかが缶詰、されど缶詰」
本当に「呑む」ことを愛する開発営業部のみなさんが、
とっても楽しそうに情熱を詰め込んだ商品なのです。

今回、この「缶つま」さんの販促本
缶つまBOOKシリーズの「缶つま晩酌暦帖」を、
今宵堂も一緒に作らせていただきました。

料理のスタイリングやコラムも含めた文章まで、
自由に楽しく作らせてもらったこの本。

京都の四季の移ろいを感じながら、
今宵はどんな晩酌を楽しもうか?
季節の食材を「缶つま」に添え、
そこに合わせるお酒のセレクトもまた楽しむ。
美味しい料理のレシピ本ではなく、
ささやかな日々の酒卓を綴った一冊です。

また、クリスマスやお正月といった
季節の祝い事と同じように、
「おうち花見酒」「送り火」「こたつ酒」など、
家庭の中の小さな出来事を盛り込みました。

仕事や子育て、日々に追われる中での晩酌は、
身の丈に合ったささやかな幸せ。
でも、ちょっとしたその家庭の小さな出来事が、
一年の節目を感じながら暮らすスパイスとなるかもしれません。
それを酒卓の上で小さな物語として夢想するのも
「晩酌」という行為の醍醐味ではないでしょうか。

京の名所外呑みコラムや酒器についてのあれこれ。
そして、大宮エリーさん木村衣有子さん
倉嶋紀和子さんあおい有紀さんによる
晩酌エッセイも吞兵衛の心をくすぐります。

この「缶つま晩酌帖」の制作を通して、
この缶詰がひとつの企業の看板商品として
ヒットした理由がしみじみと分かりました。

仕事とは、情熱と工夫。そして、楽しむこと。
それは、しっかりと美味しさとなって、
ひと缶の中に詰まってます。
楽しみながら作らせていただいたこの本も、
巷の吞兵衛さんたちに
美味しくつまんでいただけますように。

※『缶つま晩酌暦帖』はK&K・国分グループさんの
「缶つま」関連のイベント等で配布される冊子です。
配送の方には対応できませんが、
今宵堂の工房の方でも配布しております。

札幌酒場百景

昨夏の終わりから、うまいもんに浸り続けた北国の旅も
ついに終着駅へ・・・。
ほろ酔う器展』の巡回に合わせて辿り着いた札幌。
道東の長閑な自然に身を委ねていた私たちにとって、
そこは、目が眩むほど「酒場」に満ちた場所でした。

まずは昼飯、腹ごしらえ。西八丁目の「和三梵」さん。
青い扉にクラシックなシャンデリア、ああ、久々の都会。
NY仕込みのベーグルランチをお目当てに・・・と思いつつも、
カウンターに並ぶニッポンの酒瓶についつい頬がゆるみます。

夜は、北34条駅側の室蘭焼鳥「とりきん」さんへ。
室蘭焼鳥は、豚肉を使い独特の甘いタレに
添えられた辛子をつけてかじりつきます。

じゅわっと沁みる串にビール。
そして何よりも全国各地の銘酒が揃っているのも
この酒場の魅力!呑んでないはずの娘も、
札幌の吞兵衛さんとも合流してハイテンションに。

梯子酒は、平岸の「味処 高雄」さん。
うちの酒器や肴皿もどんどん並んで光栄な卓。
飲食店さんでの思いがけない器と肴の組み合わせは、
作り手としての密かな楽しみ。
店主・健太郎さんとの轆轤談義も楽しく、
ちょっと甘えて、子連れで長居してしまいました。

二日酔いもなく、元気に目覚めた朝は、
余市の「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」までひとっ走り。
ミーハーな私たちが、
朝ドラ「マッサン」で開眼したウイスキー。
敷地内のバーカウンターでいただくワンショットも至極の味。
日本に新しい酒の道を開拓した、マッサン。
四の五の言わずに、いい仕事していい酒呑もうぜって、
聖地でポットミルを前に誓い合うのでした。

夕刻には、江別のイタリアン「マリナーラ」さんへ。
こちらは、女性のシェフがひとりで切り盛りされているお店。
レンガ造りの一軒家は、昔の迎賓館とのこと。
古き良き時代の味わいとセンスが、
部屋や庭、家具のひとつひとつに滲み込んでいます。

オーナーシェフのまりさんは、
なんと、結婚して京都へ。
そして、出産、今も子育て真っ最中!
江別と京都を行き来しながら営業をされています。

「マリナーラ」のコースは、
最高の旬の食材をおいしい匙加減でサーブされています。
おそらく、この北海道でしか食べられないイタリアン。
旬の味が素材だけでなく、ソースの下地にもしっかりと息づく、
手間のかかった風味は、彼女の気骨のある生き方そのものでした。
ノンアルコールドリンクの充実ぶりもドライバーには嬉しいです。

そして、いよいよ、京都から恋い焦がれていた
第二展示会場である「GRIS」の時間。
グレイッシュな色彩の中に、控えめなスパイスのように
味のある家具や照明が並んでいる空間。
そこに、今宵堂の器たちも心地よく並んでおりました。
※ 会場の様子はfacebookページをどうぞ。

展示の時間終了後は、札幌のみならず、
東京や仙台から展示に駆けつけてくださった
酔っぱ・・・失礼!お客さまとともに乾杯を。

こちらのお料理は不思議な趣を醸しています。
点心が主な中華ながらも、和食のやわらかさ。
季節のものを掬い上げた春巻、焼売、蒸籠ご飯は、
素材や姿形は中華だけれども、油を感じさせない爽やかな味。
合わせるお酒は、燗酒やワイン。
うちの薄いグレーを纏った徳利をゆっくり傾けました。

「GRIS」はご夫婦ふたりで営まれているお店ならではの、
こじんまりとした豊かさがあります。
慈しんで作られたお店の中のきれいな笑顔。
ふたりの思いがそのまま、日々のおいしさに繋がっていることを
うれしく堪能させていただきました。

この夜の梯子酒は、すすきの「もろはく」さん。
札幌で必ず寄りたい場所のひとつです。
ずらり揃った美酒の中から北海道のお酒を。
バカラのグラスで口に流し込む日本酒は、
この酒場ならではの愉しみ。
長いカウンターでしっとりすすきのに浸りたくなります。

最後の梯子は「酒肴や伸」さんへ。
いつもより呑んだせいか、
店主・蒲原さんの男前の顔しか覚えておりません〜。
再訪を誓う札幌の夜でした。

また別の夜には、すすきのど真ん中の「かけはし」さんへ。
ナイスガイ達の子守サポートにより、
楽しく子連れ呑みさせていただきました。

じわっと炙った椎茸の美味しさと大きさ!
ここではこれでもかと北海道の味を満喫。
東京からのお客さまも含め、
札幌の吞兵衛さんたちのおかげで
腹がよじれるほど大笑いの宴でした。

札幌最後の夜は、この街きっての銘店「味百仙」さんへ。
娘がモエレ沼公園で遊び尽くして寝るという
ミラクルを発動し、酒場の粋をゆっくりと・・・。
豪快が売りのように思われる北海道の料理ですが、
「味百仙」さんは、お刺し身ひとつをとっても、
キリッと引き締まった美しさに見とれます。
そして、大将のやわらかな言葉に
お客さんへの思いやりがにじみ出ていて、
何気なさとやさしさ、それが年季ってものなのですね。
そんな酒場でうちの器たちもこっそり紛れて
嬉しさで酔いもすすみました。

名残惜しい梯子は「参醸倶楽部」さん。
カウンターの広さが吞兵衛さんたちを
懐深く見守ってくれるようです。
「おっ猪口ちょい」と名付けた可盃も、
居心地良くゆらゆらり。
北国で出会う夏のお燗酒、
うれしく燗徳利で北の旅を〆めました。

二十日間にわたる北海道旅。
どんな街にも店はあり、酒場はあり、
その土着の人の姿と酔い景色を垣間見る度に、
これからも旅を続けたいなと思うのです。
土地に人あり、人あらば酒あり。
だから、旅はおもしろい。

心豊かな呑助さんたち、たくさんお世話になり、
本当にありがとうございました。
おまけに、元気いっぱいにお伴してくれた我が娘にも、ありがとう!

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