新緑芽いた四月の半ば、
瀬戸内の港町・牛窓で開催された「牛窓クラフト散歩」。
日本各地から作り手が集まったこのイベントに、
今宵堂は今年も家族揃って参加させていただきました。
牛窓は、やわらかな潮風が吹くとても穏やかな町です。
海を背に山道を登り、丘の上から眺めると、
島々が浮かぶ瀬戸内のきらめきが目に飛び込んできます。
誰の心にも宿る故郷のようなものを、
いつもこの景色の中に感じます。
そして、もうひとつの見どころが、古く趣のある家屋の街並み。
このイベントでは、作り手たちがそんな民家の一間を
お借りして展示をさせていただくのです。
私たちがお世話になったのは、
現役の材木屋さんの事務所兼おじいちゃんの住まい。
日々の息遣いが聞こえる空間に、
酒器たちが不思議と面白く並びます。
90年経ってもびくともしない堅牢さは、
その当時、牛窓の家がとても質の良い木材で作られたから、
と快活な社長さんが誇らしげに教えてくれました。
街の民家が会場ということもあって、
揺れる洗濯物や海を渡る船を横目に、
「散歩」の途中でちょっとお家を覗く気軽さ。
地元の方々や四国や関西といった遠方からも
たくさんの方々にお散歩いただきました。
「ここ、いいところですねぇ」というお言葉に
私たちもウンウンとうれしくなりました。
酒場や宿で、瀬戸内の美味を堪能しながら、過ごした3日間。
そして、わくわくしつつも
ちょっと心配していたうちの2歳児は、
思い掛けないほど思いっきり牛窓を堪能してくれました。
真っ黒に日焼けしながら街を駆け巡って、
展示のお家やご近所のおじいちゃんおばあちゃんたちに
ちゃっかり甘えて、おやつとおもちゃ三昧。
2年前は、ちょこんと軒先に座っていただけなのにねぇ。
「クラフト」というものづくりのカテゴリーが
「生活」という方向を向いているものであるならば、
おシャレを集めたカッコいい空間ではなく、
牛窓という限りなく日常の景色が流れるこの街が、
イベントの舞台になっていたことに大きな意味を感じました。
関係者の方々の思いや街の人々のおおらかな心あってこそ、ですね。
展示を終え、駅へと向かうため海沿いの道を車で走っていると、
遠くの方に娘を可愛がってくれたご夫婦が
大きく手を振られている姿が見えました。
素敵な思い出をうれしく胸に、
またいいものづくりをしたいと感じた春でした。
展示の写真は、今宵堂のfacebookページでもどうぞ。