北の酒場の酒器とぬくもり


ゆっくりと懐かしむ昨年の北国紀行。
お腹いっぱいの十勝の後は、
旭川・富良野へと北上しました。

旭川は札幌に次ぐ大都市ながらも、
なんと、公園でリスにも出会ってしまうのは、
さすが北海道!

ちょいと足をのばせば、富良野に美瑛と、
屈指の観光地を楽しめるのも魅力。
ミーハー家族は「北の国から」のロケ地を巡りながら、
一日一ソフトクリームの課題をなんなくこなし、
草の香りで胸が満たされる日々でした。

しかし、やっぱり旅の愉しみは夜。
旭川には、憧れの酒場があるのです。

長年想いを馳せていた「独酌三四郎」さん。
昭和21年創業、北海道屈指の銘店で、
女将の切れ味やさしい接客と旨い肴。
長い年月、地元の吞兵衛さんに愛され続ける場所には、
旅客の心をも癒す空気がありますね。

酒器屋の私たちにとってのお目当ては、
三四郎さんの「銚釐(ちろり)」。
燗酒は湯煎が主ですが、こちらの焼〆の銚釐は、
炭火で酒器ごとつける「焼き燗」として登場します。
その昔はよく使われていた燗付けの手法とのこと。
しかし、実は京焼というこの焼き燗用の銚釐は、
今は作られておらず、現役の幻の酒器であるのです。

何も言わずとも「これ見たかったんでしょ。」と、
女将が出してくれた小振りの銚釐。
長い月日、旨い酒を熱くしみ込ませてきたその肌は、
とても艶やかでありました。
北の吞兵衛をつつんできた酒場で佇む酒器の幸せな姿。
私たちもそっと噛みしめて、
銚釐作りへの熱が高まりました。

以前からご縁があったお店だったということもあり、
3歳の娘連れだったので、開店同時に少しだけ
お邪魔させていただきました。
娘が大きくなってちゃんとまた連れてきたいな。

別の日には、大衆酒場「ぎんねこ」さんへ。
こちらもかわいい鳩徳利の鳩燗で有名ですが、
旭川のソウルフード「新子焼き」がお目当て。
若鶏の半身を素焼きしてて味をつけた料理は、
渋くも豪快!こういうその街のグルメを見つけることは
本当に旅の楽しみですねー。

さて、酒場が大好きな私たちですが、
「子連れ」となると行けるお店は限られてきます。
ただ「銀ねこ」さんには「子連れ可」の案内が・・・。
予約時の電話でも驚くほどの歓迎ムード。
意外と家族向けのお店なのかな?と思いながら、
暖簾をくぐって踏み入れた店内は、
もうまっこと申し分ない「大衆酒場」。
きゅうきゅうのカウンターと小さな小上がり二卓。
そして、地元の吞兵衛さんたちのくつろいだ赤ら顔。
しかし、お店の方にもあたたかく迎えていただき、
娘もどこか達観した表情で、
もくもくと焼きたての新子焼をほおばっておりました。
場にも慣れてきて、「おちんちーん!」と言うと、
酔っ払いのおじさんたちに
喜んでもらえることも覚えてしまいました・・・。

子連れで酒場に行くことには、いろんな意見がありますね。
酒場とはオトナのための場所である、と思うのですが、
日本各地を子連れで旅して感じるのは、
「地元」の酒場はちょっと違うな、ということ。
郷土の美味しいものを丁寧なお料理で、
リーズナブルに楽しませてくれるお店は、その土地の顔であり、
地元の人々にとって「家族」の店として存在していることがままあります。
そんな店を探って、きちんと電話で確認をとって、予約をして・・・、
くつろぎながら旅の酒卓を楽しんでいきたいなあと思います。

順調に目方を増やしながら、
いよいよ最後の酒場、いやいや次の展示会場・札幌へ。
久しぶりの大都会ですー。

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