札幌酒場百景

昨夏の終わりから、うまいもんに浸り続けた北国の旅も
ついに終着駅へ・・・。
ほろ酔う器展』の巡回に合わせて辿り着いた札幌。
道東の長閑な自然に身を委ねていた私たちにとって、
そこは、目が眩むほど「酒場」に満ちた場所でした。

まずは昼飯、腹ごしらえ。西八丁目の「和三梵」さん。
青い扉にクラシックなシャンデリア、ああ、久々の都会。
NY仕込みのベーグルランチをお目当てに・・・と思いつつも、
カウンターに並ぶニッポンの酒瓶についつい頬がゆるみます。

夜は、北34条駅側の室蘭焼鳥「とりきん」さんへ。
室蘭焼鳥は、豚肉を使い独特の甘いタレに
添えられた辛子をつけてかじりつきます。

じゅわっと沁みる串にビール。
そして何よりも全国各地の銘酒が揃っているのも
この酒場の魅力!呑んでないはずの娘も、
札幌の吞兵衛さんとも合流してハイテンションに。

梯子酒は、平岸の「味処 高雄」さん。
うちの酒器や肴皿もどんどん並んで光栄な卓。
飲食店さんでの思いがけない器と肴の組み合わせは、
作り手としての密かな楽しみ。
店主・健太郎さんとの轆轤談義も楽しく、
ちょっと甘えて、子連れで長居してしまいました。

二日酔いもなく、元気に目覚めた朝は、
余市の「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」までひとっ走り。
ミーハーな私たちが、
朝ドラ「マッサン」で開眼したウイスキー。
敷地内のバーカウンターでいただくワンショットも至極の味。
日本に新しい酒の道を開拓した、マッサン。
四の五の言わずに、いい仕事していい酒呑もうぜって、
聖地でポットミルを前に誓い合うのでした。

夕刻には、江別のイタリアン「マリナーラ」さんへ。
こちらは、女性のシェフがひとりで切り盛りされているお店。
レンガ造りの一軒家は、昔の迎賓館とのこと。
古き良き時代の味わいとセンスが、
部屋や庭、家具のひとつひとつに滲み込んでいます。

オーナーシェフのまりさんは、
なんと、結婚して京都へ。
そして、出産、今も子育て真っ最中!
江別と京都を行き来しながら営業をされています。

「マリナーラ」のコースは、
最高の旬の食材をおいしい匙加減でサーブされています。
おそらく、この北海道でしか食べられないイタリアン。
旬の味が素材だけでなく、ソースの下地にもしっかりと息づく、
手間のかかった風味は、彼女の気骨のある生き方そのものでした。
ノンアルコールドリンクの充実ぶりもドライバーには嬉しいです。

そして、いよいよ、京都から恋い焦がれていた
第二展示会場である「GRIS」の時間。
グレイッシュな色彩の中に、控えめなスパイスのように
味のある家具や照明が並んでいる空間。
そこに、今宵堂の器たちも心地よく並んでおりました。
※ 会場の様子はfacebookページをどうぞ。

展示の時間終了後は、札幌のみならず、
東京や仙台から展示に駆けつけてくださった
酔っぱ・・・失礼!お客さまとともに乾杯を。

こちらのお料理は不思議な趣を醸しています。
点心が主な中華ながらも、和食のやわらかさ。
季節のものを掬い上げた春巻、焼売、蒸籠ご飯は、
素材や姿形は中華だけれども、油を感じさせない爽やかな味。
合わせるお酒は、燗酒やワイン。
うちの薄いグレーを纏った徳利をゆっくり傾けました。

「GRIS」はご夫婦ふたりで営まれているお店ならではの、
こじんまりとした豊かさがあります。
慈しんで作られたお店の中のきれいな笑顔。
ふたりの思いがそのまま、日々のおいしさに繋がっていることを
うれしく堪能させていただきました。

この夜の梯子酒は、すすきの「もろはく」さん。
札幌で必ず寄りたい場所のひとつです。
ずらり揃った美酒の中から北海道のお酒を。
バカラのグラスで口に流し込む日本酒は、
この酒場ならではの愉しみ。
長いカウンターでしっとりすすきのに浸りたくなります。

最後の梯子は「酒肴や伸」さんへ。
いつもより呑んだせいか、
店主・蒲原さんの男前の顔しか覚えておりません〜。
再訪を誓う札幌の夜でした。

また別の夜には、すすきのど真ん中の「かけはし」さんへ。
ナイスガイ達の子守サポートにより、
楽しく子連れ呑みさせていただきました。

じわっと炙った椎茸の美味しさと大きさ!
ここではこれでもかと北海道の味を満喫。
東京からのお客さまも含め、
札幌の吞兵衛さんたちのおかげで
腹がよじれるほど大笑いの宴でした。

札幌最後の夜は、この街きっての銘店「味百仙」さんへ。
娘がモエレ沼公園で遊び尽くして寝るという
ミラクルを発動し、酒場の粋をゆっくりと・・・。
豪快が売りのように思われる北海道の料理ですが、
「味百仙」さんは、お刺し身ひとつをとっても、
キリッと引き締まった美しさに見とれます。
そして、大将のやわらかな言葉に
お客さんへの思いやりがにじみ出ていて、
何気なさとやさしさ、それが年季ってものなのですね。
そんな酒場でうちの器たちもこっそり紛れて
嬉しさで酔いもすすみました。

名残惜しい梯子は「参醸倶楽部」さん。
カウンターの広さが吞兵衛さんたちを
懐深く見守ってくれるようです。
「おっ猪口ちょい」と名付けた可盃も、
居心地良くゆらゆらり。
北国で出会う夏のお燗酒、
うれしく燗徳利で北の旅を〆めました。

二十日間にわたる北海道旅。
どんな街にも店はあり、酒場はあり、
その土着の人の姿と酔い景色を垣間見る度に、
これからも旅を続けたいなと思うのです。
土地に人あり、人あらば酒あり。
だから、旅はおもしろい。

心豊かな呑助さんたち、たくさんお世話になり、
本当にありがとうございました。
おまけに、元気いっぱいにお伴してくれた我が娘にも、ありがとう!

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