炬燵で丸くなる季節へ

先日終了いたしました盛岡「ひめくり」さんでの、
「猫」をテーマにした展示『吾盃ハ猫デアル』
今回、ご挨拶文としてこんな文を綴りました。
(写真をクリックすると大きくなります)

抱きしめたくなる愛らしさを持ちながらも、
その佇まいから醸し出される憂い、
なんだか酸いも甘いも嘗め尽くしたような渋さ。
そう、猫って「可愛い」だけではない。

愛らしさの中にも侘び風合い、
遊んだデザインにも骨董然とした肌合を。
そう心がけながら、
あとひと手間を添えようか、しばし筆を置くべきかと、
途中で何度も立ち止まりながら進めた制作でした。

ニャーと焼きあがってきた器は、
こんな猫たちになりました。

「山猫徳利・山猫猪口」
帽子をとれだのお絞りで手をふけだの、
色々と「注文の多い」酒器でございます。
岩手生まれの彼の文豪へのオマージュです。

「猫騙シ盃」
十二支の逸話から。
鼠に騙されて一日遅れで行った猫は、
干支に入れず盃の裏に・・・。
終電を逃さないようにとの戒めでもあります。

「猫額皿」
猫の額ほどの僅かな肴でも、
ちびちびつまみながら
ほどよく秋の夜長は更けてゆきます。
塩でも豆でも切れっ端でも、
みみっちさもまた旨いのですよね。

「小判箸置」
表は「千万両」、裏は「無一文」
呑みすぎて、ひっくり返ってスッテンテン。
猫に小判といいますが、
吞兵衛が小金を持つと酒に消える・・・。

「注器(チューき)」
猫と対をなす宿命を背負った鼠。
きらわれものですが、
たまには目線や酒も注いであげたい。
でも呑み過ぎにはごチュー意を。

「ニャン徳利」
大衆酒場の徳利として愛される
口元に膨らみを持たせたこの形状。
こぼれやすいので、
徳利をおちょこにくっつけて注ぐのが酒呑みの流儀。
その姿はゴロニャーンと甘える猫の様。

「猫飯碗」
呑んだ暮れ、〆には白飯、鰹節。
今、うちの娘のご飯茶碗はこれでございます。

(ほかの器や展示の様子は、facebookページのアルバムをどうぞ。)

会場の「ひめくり」さんは気持ちいい中津川沿い。
ガラス越しに眺める川原の景色は三年経っても変わらず。
この光の中で、お店に並ぶ手仕事の品々を
ゆっくりと手に取ることができます。

店長の美帆さんの優しくうれしい気配りに甘えながら、
私たちも在店時間を楽しく過ごさせていただきました。
ちなみに、美帆さんのおうちの猫ちゃんの名は、
「ひめ」と「くり」!
ひめくりさんのTwitterでときどきグラビアが載ってます。

「ひめくり」というお店で何かいいものを見つけたい、
そんな思いでご来店されている地元の方々の気持ちを
ひたひたと感じた在店二日間。
うちの酒器たちもニヤリと楽しんでいただけたかな・・・。

そして、京都、東京、福島、仙台などなど、
遥か遠方からも盛岡へ足を運んでくださったみなさま、
目頭熱く、ありがとうございます!
みなさんの酔い盛岡散歩のお話も楽しかったですっ。

季節はあっという間に流れて、
京都も秋深く、盛岡は初冬の気配でしょうか。
猫も炬燵で丸くなる、そんな夜にそっと傍に転がる
酒器となってくれますように・・・。

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