美味しい盛岡慕情

東北はもう冬支度を迎えている模様ですが、
のんびり綴る、初秋の東北紀行は続いておりますー。

四度目の来訪となった盛岡。
この街もまた胃袋をぐっと鷲掴みにする、
美味しいものが詰まっている街です。

盛岡駅に降り立つと、真ん前に君臨する「盛楼閣」。
まずは、洗礼的に食べたくなる盛岡冷麺を。
といっても、こちらは焼肉屋さんな訳でありまして、
お昼時といえども、一皿くらいジュジュっと炙って、
一杯ひっかけちゃうのが醍醐味というか、礼儀でございましょう。
冷麺に添えられる季節の果物は、まだ西瓜。
秋の梨もいつか出会ってみたいものです。

そして、盛岡の呑み屋街といえば、桜山神社の参道!
鳥居の内側に昭和の趣を漂わせる灯りが並んでいる様は、
吞兵衛の旅情を掻き立ててくれます。

ここにある「じゃじゃ麺」の名店が「白龍」。
盛岡冷麺、わんこそばに並ぶ盛岡三大麺のひとつですが、
店内はその偉業感を全く感じさせない、大衆食堂的な佇まい。
ただ「じゃじゃ麺」はかなりの異彩を放つご当地麺です。

供された皿の中の辛味噌と麺と絡め、
ラー油、ニンニクや酢で、自分好みの味に仕上げていきます。
更に麺を食べ終わった後は、器に卵を割りいれて、
お店の人にスープを入れてもらい、
〆の「ちいたんたん(鶏蛋湯:玉子スープ)」を作ります。
三年振りに再会した、この魅惑のセミセルフ仕立て。
辛くてあまり麺を食べられなかった娘には、
そっと飴を差し出してくれる店のおばちゃん・・・。
こんな岩手の人々のやさしさが、
楽しい子連れ旅を支えてくれました。

そして、盛岡のソウルフードといえば、
なんといっても「福田パン」。
焼きたてのコッペパンに具をチョイスして挟んでもらうという、
このシンプルかつ例を見ない臨場感がたまりません!
滞在中、朝食をこのパンに捧げようと誓った甲斐あって、
4泊中3パンを達成。
連日通ってもネタが尽きない具のバラエティさ。
名物「あんバター」も最高ですが、
うちのイチ押しは「レンコンしめじ&照り焼きチキン」のハーフ&ハーフ。
娘は「いちごミルク」一辺倒で毎食一本。若いってすごい。

街の中には、のんびりと木陰で寛げるパン食スポットが点在します。
盛岡城址公園で、妹家族と過ごした福田パン時間も
ほっこりとした思い出。ちなみに、酪農大国なので牛乳もおいしい。

そうそう、三年前に盛岡でトークイベントをご一緒した
木村衣有子さんの新刊『コッペパンの本』の巻頭にも、
「福田パン」がじっくり載っておりまーす。

展示会初日の夜は、酒場好きに成長した娘を連れて、
盛岡のみなさんや遠方からのお客さまもご一緒に、
桜山「MASS」さんの二階へ大集合。
大人14名に子ども5名といったカオスを確信する子連れ率ながらも、
快く引き受けてくださったMASSさんに心より感謝です!

子どもたちの嬌声が飛び交う中、
今をトキメク「遠野のどぶろく」を啜り、
盛岡の地での大宴会にしみじみいたしました。

MASSさんでは、うちの猫酒器たちも
ニャーと仲間入りさせていただいております。
お昼から旨い燗酒呑める、旅人にもたまらんお店ですよっ。

明る夜もまた東京からご来訪!のお客さまとの宴。
盛岡のわんこそばの老舗「東家」さんのプロデュースによる
Dining&Bar 九十九草」さんにて。
今回の猫展に合わせて「猫のお酒を、猫の盃で」と称して、
会期中、特製猫ラベルのお酒「にゃえもん」(川村酒造店)を
今宵堂製「ねこ盃」で出してくださいました☆

実は、この日のお昼ごはんは、
本家「東家」さんで「カツ丼」を。
サラリーマンや近所のおじいちゃんも続けざまに「カツ丼」!
「東家」といえば、「カツ丼」も旨い!そうで、
蕎麦出汁が染み込んだニ段重ねの厚いカツがたまりません。
街の人に愛される、街の飯処としての蕎麦屋に
小さく感動してしまうのです。

この日の梯子酒は再び桜山へ戻り、
かもし処 陽-SUN」さんへ。
ファンクな店長さんが醸してくれる雰囲気に
肴と酒のこだわりがキラリと光ります。
旅酒の良さを感じるのは、酔いお店のカウンターで
しみじみと杯を傾ける瞬間。
またゆっくりと訪れたい一軒に出会えました。

どうしても行きたい場所、というものがどの街にもあるものですが、
中津川の畔り「喫茶 carta」さんは、盛岡でのそのひとつ。
静かな空間で所々に置かれた本をめくりつつ、
珈琲とサンドウィッチで過ごすゆるやかな時間。
心に留まったのは、かぼちゃスープの漆のお椀。
漆器の持つ和的なイメージよりも、
その滑らかな肌合いとシンプルな形がとても印象的でした。

盛岡を発つ日のお昼は、
駆け込むように「中華そば・中河」さんへ。
お母さんと息子さんだけで営まれている、
街の小さなお店ながらも、地元の方から旅人まで、
ここの一杯を求めて暖簾をくぐる人が後を絶えません。
どこか静謐な空気の店内にお品書きは「中華そば」ひとつのみ。
娘の箸も止まらない優しい味。
どこかにあるようで、見つけられない、そんな大切なお店です。

盛岡の食を色々楽しんだこの旅。
ふと思い起こすと、その食からは、
なんだか穏やかな人の佇まいが浮かびます。
落ち着く街の風情は、
やはり旅先で触れ合った人の優しさから
醸し出されていたように思います。

また小さな酒器をひっさげて、
この街に帰ってきたいなと思います。

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