いつも心にウキウキを☆

鴨川の水面を覗くと、おたまじゃくしがスイスイ。
ケロケロと鳴く夏の音を聴きながらの晩酌もそろそろ。
ちなみにこちらの酒器は「蛙猪口猪口(かえるちょこちょこ)」。
帰る気配のない酔客に暇(いとま)を促すのにも使えます。

先日4日をもちまして、福岡・とどろき酒店さんでの展示
『ウキウキ★サカヅキ』をうれしく終えさせていただきました!

ウキウキ、フラフラ、ウツラウツラにチリンチリン。
日本語の中には、とてもたくさんの
オノマトペ(擬音語・擬態語など)が息づいていますね。
「楽しくて心が浮かれてしまう」という気分を、
「ウキウキ」という言葉の綴りで表現する面白さ。
目下、日本語学習中のうちの三歳児も、
なかなか達者に使っております。
今回の展示は、この初夏の浮き足立つような気分を
オノマトペとともに小さな酒器たちに込めてみました。
(展示の様子は、facebookページのアルバムをどうぞ!)

福岡の吞兵衛さんたちのみならず、ご遠方からのみなさまも
テクテクと足を運んでいただき、心よりお礼申し上げます!
クルクル回る徳利もソワソワしちゃう可盃も、
みなさまにクスクスと笑っていただけて酒器屋冥利に尽きました。

そして気持ちいい初夏の日曜の「泡☆タイム」は、
会場はワイワイ・ガヤガヤと楽しい角打ちとなりました。
この日のために春吉の「うわのそら」さんが肴をご用意してくださり、
シュワシュワなお酒たちでゴキゲンなひとときでした!

会場の「とどろき酒店」さんに立たせていただいた二日間。
それにしても、酒屋さんとは、なんともおもしろいところ。
一升瓶を惚れ惚れするほどドンドンと仕入れる呑み屋さん、
イソイソとお気に入りの銘柄をレジ台に置くおじさん、
店員さんにオススメの銘柄を尋ねるカワイイおねえさん。
いかなるシーンで呑まれる酒か、
ちらりと盗み見しながら、ついつい夢想してドキドキ。
キャラの立った「とどろき酒店」のスタッフさんたちの
楽しくフワフワと軽やかな雰囲気もとっても魅力的でした。

京都から福岡へと河岸を変えた「捏製作所」さんにも
やっとおじゃまできました。
ヴァン・ナチュールも加わった新しいメニューにワクワク。

捏製作所さんのお座敷にて、宴にまみれたうちの娘も
「おおさかに〜は、う〜まいもんがいっぱいあるんやで〜」
の歌をニコニコと披露しておりました〜。

お酒っていいな、楽しいな。
やっぱりお酒は楽しくウキウキと呑んでまいりましょう~。

今宵堂の酒器展『ウキウキ★サカヅキ』


鴨川を吹き抜ける風に揺られ、川面が輝く新緑のとき。
うちの娘もお日さまの下へ駆け出してゆきます。
河原でのちょいと一杯も恋しくなる季節ですね。

気持ちも軽やかに、今宵堂10周年最初の展示を
福岡「とどろき酒店」さんでさせていただきます。

娘が好きなアニメの主題歌をききながら
思いついた展示のタイトル。
ウキウキ、ドキドキ、フワフワ、スイスイ、フラフラ。
初夏のこの気分は、たくさんのオノマトペとともに。

とどろき酒店さんは、旨いお酒とワインが目印。
素敵なイベントなどもたくさん仕掛けて、
吞兵衛心をくすぐる面白い酒屋さんです。
三年前の展示の際に撮った、
今宵堂の日常の映像もご紹介いただいてますー。
懐かしいですね。

私たちは、14日・15日に在廊させていただきますが、
なんと、15日は本場・九州ならではの「角打ち 泡☆タイム」
ほろ酔い気分で酒器を眺めていただけますとうれしいですー。

いざ、ニッポンの西海岸へ!

今宵堂の酒器展 『ウキウキ★サカヅキ』
2016年 5月14日(土)~ 6月4日(土) 10:00 ~ 19:00 月曜休
会場 / とどろき酒店  福岡市博多区三筑2-2-31
電話 / 092-571-6304

※ こちらからDMをご覧になれます。
※ 今宵堂は14日(土)・15日(日)に会場に在所いたします。

「角打ち 泡☆タイム」
5月15日(日)の13時〜17時まで、会場のとどろき酒店さんの店内にて、予約不要の立ち飲みタイムを開催いたします!初夏らしく、微発泡ニホンシュ「CO2」や発泡系のお酒を中心に日本酒・ワイン(10種類くらい)を500円〜。春吉「うわのそら」さんがうれしいおつまみもご用意してくださいます!ウキウキとお立ち寄りください。

ほろ酔い十年


2006年、春の陽射しと北風が交ざり合う頃、
私たち夫婦は、鴨川近くの小さな町家から
結婚生活を始めました。
古びた教会で式を挙げたのは、3月21日。
この日が「酒器 今宵堂」の出発だと思っています。

「毎日、晩酌をしよう。」
結婚と同時に酒器屋を歩み出した私たちの誓い。
この言葉の蓄積こそが、
まさしく私たちの十年間でした。
この写真は、ふたりでした最初の晩酌。
なんだろう?きんぴらだったかな?

大仕事を終えてほっとしたときも、
せっぱ詰まった〆切前も、
ハレの日もケの日も。
夕飯前のほんの一杯とささやかな肴で、
おつかれさまを交わすこと。

でも、仕事や子育ての慌ただしさは容赦なく、
手の込んだ肴作りは面倒な時もあります。
ならば、肉屋のコロッケや
スーパーのお総菜でもいいんじゃない?
こんな「買ってきた肴」がよく並ぶのが、
今宵堂の「晩酌帖」

素敵で丁寧な酒卓ではないけれど、
そのかわり無理もありません。
そして、街での肴探しが好きになるきっかけにもなりました。
初めてそういう晩酌の写真を撮ったとき、
それがいいのよ、と後押ししてくれた人生の先輩や
その写真を楽しんでくださった吞兵衛さんたちに
あらためて感謝です。

酒器屋を始めた当時、
銘柄も呑み方もそれほど知らぬ私たちに、
お酒のアレコレを教えてくださったのは、
工房を訪れてくださった吞兵衛のお客さまたちです。
今、定番として作り続けている酒器の多くは、
お客さまとのやりとりを介してできたものばかり。

「ハート盃」は、三重の蔵元杜氏と新潟の蔵の娘さんの
ご結婚のお祝いの器として生まれました。
「結婚」という幸せの形を
どうやって日本酒の盃にするか、
ふたりで楽しく考えたものです。
ハートという甘いモチーフのフォルムは、
そっと口付けを促すようなやさしい口当たり。
白瓷ならではの持ち味となりました。

「白瓷片口」は、東京の居酒屋さんのご注文でした。
お酒が入る容量というものをちゃんと意識し始めたのは、
この片口からかもしれません。
やきものの味わいだけではなく、
酒器屋としての成長を促された器。
やや楕円気味にすると持ちやすく、
女性のお酌もすんなりと。
でも、まだ今も試行錯誤が続く片口の奥深さ。

一合ではなく、半合でなるべくいろんなお酒を楽しむ、
という酒場のムーブメントも器は追いかけます。
うちで作っている「蕎麦猪口」は、
江戸時代初期に多い小振りのもの。
半合出しをされている飲食店さんからのご注文で
できあがったサイズです。

「白瓷平盃」は、吞兵衛夫妻のご結婚の引き出物として、
それまで作っていた平盃を見つめ直しました。
お二人の酒への愛と経験から、
平盃の大きさや佇まいが定まりました。
シンプルだからこそ、細部にこだわる、
そんな酒器作りの在り方を学んだ気がします。

この平盃に金魚の絵を描くようになったのは、
お客さまから教えていただいた「長崎の魚石」という民話より。
魚石(ぎょせき)という石の中で金魚が泳ぐお話ですが、
魚石→うおいし→おいしい、との繋がりで、
料理屋の屋号にも多いそう。
磁器の盃の中で泳ぐ金魚を眺めて一献。
ちなみに、金魚が泳げるほど薄い酒を金魚酒と呼びます。
酒言葉で遊ぶ楽しみも覚えました。

そして、晩酌だけでなく、街で「呑む」ことの
楽しさを教えてくれたのは、酒場通の師匠。
連れられて知った京都の大衆酒場、
そこに凛と並んでいたのは、大量生産の酒器たち。
中でも「徳利」はなんともいえない素っ気なさ。
そしてそれゆえの艶っぽさに大いなる感銘を受けました。
今宵堂の「燗徳利」は大衆的なものへの郷愁に
ほんのりと手跡を残していくことを意識しつつ作っています。

まだまだ数えきれないほどの酒器の成り立ち。
思い起こせば起こすほど、私たちは、
お客さまに「酒器屋」にしてもらったんだなあとしみじみ。
今はちょうど、初心な頃を少し過ぎて、
酒のあれやこれやを舐めながらの
ほろ酔い気分といったところでしょうか。

そういえば、工房の玄関にある小さな窯で、
この十年で925回の窯たきをしました。
そこから生まれたたくさんの酒器たちが、
吞兵衛さんの手元できょうもお酒に浸っているかと思うと、
こんなに幸せなことはありません。

朝、保育園へ娘を送ってから、仕事へ入ります。
「おちょこつくってる」ことを感じ始めた三歳児。
「おしごと、がんばってね。」と声を掛けてもらった日は、
なんだかウルっとうれしいものです。

こうして、今日もふたりで工房に立ちます。
この一日に、心よりありがとうございます。

「缶つま晩酌暦帖」

パカっと開けて、そのまま酒卓へ。
おつまみのための缶詰、「缶つま」。

「広島県産かき燻製油漬け」
「有明産赤貝どて煮風山椒入り」
「鹿児島県産赤鶏さつま炭火焼」

などなど魅力的なお酒の供に特化した、
まさに吞兵衛のための缶詰です。

実は、素材と製法にとことんこだわったこの缶詰、
水産物なら、水揚げからの時間をなるべく短縮するべく、
工場のおばちゃんたちの手作業で作られています。

銀座「ROCK FISH」のバーテンダー・間口さん監修のものや、
時には1缶数千円もする高級おつまみなど、
バラエティに富んだラインアップ。

大人の遊び場と題された「缶つま倶楽部」のサイトでは、
「缶つまジャズナイト」「K取部長酒場放浪記」など、
ユーモアに溢れた楽しい缶つまワールドが広がっています。

「たかが缶詰、されど缶詰」
本当に「呑む」ことを愛する開発営業部のみなさんが、
とっても楽しそうに情熱を詰め込んだ商品なのです。

今回、この「缶つま」さんの販促本
缶つまBOOKシリーズの「缶つま晩酌暦帖」を、
今宵堂も一緒に作らせていただきました。

料理のスタイリングやコラムも含めた文章まで、
自由に楽しく作らせてもらったこの本。

京都の四季の移ろいを感じながら、
今宵はどんな晩酌を楽しもうか?
季節の食材を「缶つま」に添え、
そこに合わせるお酒のセレクトもまた楽しむ。
美味しい料理のレシピ本ではなく、
ささやかな日々の酒卓を綴った一冊です。

また、クリスマスやお正月といった
季節の祝い事と同じように、
「おうち花見酒」「送り火」「こたつ酒」など、
家庭の中の小さな出来事を盛り込みました。

仕事や子育て、日々に追われる中での晩酌は、
身の丈に合ったささやかな幸せ。
でも、ちょっとしたその家庭の小さな出来事が、
一年の節目を感じながら暮らすスパイスとなるかもしれません。
それを酒卓の上で小さな物語として夢想するのも
「晩酌」という行為の醍醐味ではないでしょうか。

京の名所外呑みコラムや酒器についてのあれこれ。
そして、大宮エリーさん木村衣有子さん
倉嶋紀和子さんあおい有紀さんによる
晩酌エッセイも吞兵衛の心をくすぐります。

この「缶つま晩酌帖」の制作を通して、
この缶詰がひとつの企業の看板商品として
ヒットした理由がしみじみと分かりました。

仕事とは、情熱と工夫。そして、楽しむこと。
それは、しっかりと美味しさとなって、
ひと缶の中に詰まってます。
楽しみながら作らせていただいたこの本も、
巷の吞兵衛さんたちに
美味しくつまんでいただけますように。

※『缶つま晩酌暦帖』はK&K・国分グループさんの
「缶つま」関連のイベント等で配布される冊子です。
配送の方には対応できませんが、
今宵堂の工房の方でも配布しております。

札幌酒場百景

昨夏の終わりから、うまいもんに浸り続けた北国の旅も
ついに終着駅へ・・・。
ほろ酔う器展』の巡回に合わせて辿り着いた札幌。
道東の長閑な自然に身を委ねていた私たちにとって、
そこは、目が眩むほど「酒場」に満ちた場所でした。

まずは昼飯、腹ごしらえ。西八丁目の「和三梵」さん。
青い扉にクラシックなシャンデリア、ああ、久々の都会。
NY仕込みのベーグルランチをお目当てに・・・と思いつつも、
カウンターに並ぶニッポンの酒瓶についつい頬がゆるみます。

夜は、北34条駅側の室蘭焼鳥「とりきん」さんへ。
室蘭焼鳥は、豚肉を使い独特の甘いタレに
添えられた辛子をつけてかじりつきます。

じゅわっと沁みる串にビール。
そして何よりも全国各地の銘酒が揃っているのも
この酒場の魅力!呑んでないはずの娘も、
札幌の吞兵衛さんとも合流してハイテンションに。

梯子酒は、平岸の「味処 高雄」さん。
うちの酒器や肴皿もどんどん並んで光栄な卓。
飲食店さんでの思いがけない器と肴の組み合わせは、
作り手としての密かな楽しみ。
店主・健太郎さんとの轆轤談義も楽しく、
ちょっと甘えて、子連れで長居してしまいました。

二日酔いもなく、元気に目覚めた朝は、
余市の「ニッカウヰスキー余市蒸溜所」までひとっ走り。
ミーハーな私たちが、
朝ドラ「マッサン」で開眼したウイスキー。
敷地内のバーカウンターでいただくワンショットも至極の味。
日本に新しい酒の道を開拓した、マッサン。
四の五の言わずに、いい仕事していい酒呑もうぜって、
聖地でポットミルを前に誓い合うのでした。

夕刻には、江別のイタリアン「マリナーラ」さんへ。
こちらは、女性のシェフがひとりで切り盛りされているお店。
レンガ造りの一軒家は、昔の迎賓館とのこと。
古き良き時代の味わいとセンスが、
部屋や庭、家具のひとつひとつに滲み込んでいます。

オーナーシェフのまりさんは、
なんと、結婚して京都へ。
そして、出産、今も子育て真っ最中!
江別と京都を行き来しながら営業をされています。

「マリナーラ」のコースは、
最高の旬の食材をおいしい匙加減でサーブされています。
おそらく、この北海道でしか食べられないイタリアン。
旬の味が素材だけでなく、ソースの下地にもしっかりと息づく、
手間のかかった風味は、彼女の気骨のある生き方そのものでした。
ノンアルコールドリンクの充実ぶりもドライバーには嬉しいです。

そして、いよいよ、京都から恋い焦がれていた
第二展示会場である「GRIS」の時間。
グレイッシュな色彩の中に、控えめなスパイスのように
味のある家具や照明が並んでいる空間。
そこに、今宵堂の器たちも心地よく並んでおりました。
※ 会場の様子はfacebookページをどうぞ。

展示の時間終了後は、札幌のみならず、
東京や仙台から展示に駆けつけてくださった
酔っぱ・・・失礼!お客さまとともに乾杯を。

こちらのお料理は不思議な趣を醸しています。
点心が主な中華ながらも、和食のやわらかさ。
季節のものを掬い上げた春巻、焼売、蒸籠ご飯は、
素材や姿形は中華だけれども、油を感じさせない爽やかな味。
合わせるお酒は、燗酒やワイン。
うちの薄いグレーを纏った徳利をゆっくり傾けました。

「GRIS」はご夫婦ふたりで営まれているお店ならではの、
こじんまりとした豊かさがあります。
慈しんで作られたお店の中のきれいな笑顔。
ふたりの思いがそのまま、日々のおいしさに繋がっていることを
うれしく堪能させていただきました。

この夜の梯子酒は、すすきの「もろはく」さん。
札幌で必ず寄りたい場所のひとつです。
ずらり揃った美酒の中から北海道のお酒を。
バカラのグラスで口に流し込む日本酒は、
この酒場ならではの愉しみ。
長いカウンターでしっとりすすきのに浸りたくなります。

最後の梯子は「酒肴や伸」さんへ。
いつもより呑んだせいか、
店主・蒲原さんの男前の顔しか覚えておりません〜。
再訪を誓う札幌の夜でした。

また別の夜には、すすきのど真ん中の「かけはし」さんへ。
ナイスガイ達の子守サポートにより、
楽しく子連れ呑みさせていただきました。

じわっと炙った椎茸の美味しさと大きさ!
ここではこれでもかと北海道の味を満喫。
東京からのお客さまも含め、
札幌の吞兵衛さんたちのおかげで
腹がよじれるほど大笑いの宴でした。

札幌最後の夜は、この街きっての銘店「味百仙」さんへ。
娘がモエレ沼公園で遊び尽くして寝るという
ミラクルを発動し、酒場の粋をゆっくりと・・・。
豪快が売りのように思われる北海道の料理ですが、
「味百仙」さんは、お刺し身ひとつをとっても、
キリッと引き締まった美しさに見とれます。
そして、大将のやわらかな言葉に
お客さんへの思いやりがにじみ出ていて、
何気なさとやさしさ、それが年季ってものなのですね。
そんな酒場でうちの器たちもこっそり紛れて
嬉しさで酔いもすすみました。

名残惜しい梯子は「参醸倶楽部」さん。
カウンターの広さが吞兵衛さんたちを
懐深く見守ってくれるようです。
「おっ猪口ちょい」と名付けた可盃も、
居心地良くゆらゆらり。
北国で出会う夏のお燗酒、
うれしく燗徳利で北の旅を〆めました。

二十日間にわたる北海道旅。
どんな街にも店はあり、酒場はあり、
その土着の人の姿と酔い景色を垣間見る度に、
これからも旅を続けたいなと思うのです。
土地に人あり、人あらば酒あり。
だから、旅はおもしろい。

心豊かな呑助さんたち、たくさんお世話になり、
本当にありがとうございました。
おまけに、元気いっぱいにお伴してくれた我が娘にも、ありがとう!

北の酒場の酒器とぬくもり


ゆっくりと懐かしむ昨年の北国紀行。
お腹いっぱいの十勝の後は、
旭川・富良野へと北上しました。

旭川は札幌に次ぐ大都市ながらも、
なんと、公園でリスにも出会ってしまうのは、
さすが北海道!

ちょいと足をのばせば、富良野に美瑛と、
屈指の観光地を楽しめるのも魅力。
ミーハー家族は「北の国から」のロケ地を巡りながら、
一日一ソフトクリームの課題をなんなくこなし、
草の香りで胸が満たされる日々でした。

しかし、やっぱり旅の愉しみは夜。
旭川には、憧れの酒場があるのです。

長年想いを馳せていた「独酌三四郎」さん。
昭和21年創業、北海道屈指の銘店で、
女将の切れ味やさしい接客と旨い肴。
長い年月、地元の吞兵衛さんに愛され続ける場所には、
旅客の心をも癒す空気がありますね。

酒器屋の私たちにとってのお目当ては、
三四郎さんの「銚釐(ちろり)」。
燗酒は湯煎が主ですが、こちらの焼〆の銚釐は、
炭火で酒器ごとつける「焼き燗」として登場します。
その昔はよく使われていた燗付けの手法とのこと。
しかし、実は京焼というこの焼き燗用の銚釐は、
今は作られておらず、現役の幻の酒器であるのです。

何も言わずとも「これ見たかったんでしょ。」と、
女将が出してくれた小振りの銚釐。
長い月日、旨い酒を熱くしみ込ませてきたその肌は、
とても艶やかでありました。
北の吞兵衛をつつんできた酒場で佇む酒器の幸せな姿。
私たちもそっと噛みしめて、
銚釐作りへの熱が高まりました。

以前からご縁があったお店だったということもあり、
3歳の娘連れだったので、開店同時に少しだけ
お邪魔させていただきました。
娘が大きくなってちゃんとまた連れてきたいな。

別の日には、大衆酒場「ぎんねこ」さんへ。
こちらもかわいい鳩徳利の鳩燗で有名ですが、
旭川のソウルフード「新子焼き」がお目当て。
若鶏の半身を素焼きしてて味をつけた料理は、
渋くも豪快!こういうその街のグルメを見つけることは
本当に旅の楽しみですねー。

さて、酒場が大好きな私たちですが、
「子連れ」となると行けるお店は限られてきます。
ただ「銀ねこ」さんには「子連れ可」の案内が・・・。
予約時の電話でも驚くほどの歓迎ムード。
意外と家族向けのお店なのかな?と思いながら、
暖簾をくぐって踏み入れた店内は、
もうまっこと申し分ない「大衆酒場」。
きゅうきゅうのカウンターと小さな小上がり二卓。
そして、地元の吞兵衛さんたちのくつろいだ赤ら顔。
しかし、お店の方にもあたたかく迎えていただき、
娘もどこか達観した表情で、
もくもくと焼きたての新子焼をほおばっておりました。
場にも慣れてきて、「おちんちーん!」と言うと、
酔っ払いのおじさんたちに
喜んでもらえることも覚えてしまいました・・・。

子連れで酒場に行くことには、いろんな意見がありますね。
酒場とはオトナのための場所である、と思うのですが、
日本各地を子連れで旅して感じるのは、
「地元」の酒場はちょっと違うな、ということ。
郷土の美味しいものを丁寧なお料理で、
リーズナブルに楽しませてくれるお店は、その土地の顔であり、
地元の人々にとって「家族」の店として存在していることがままあります。
そんな店を探って、きちんと電話で確認をとって、予約をして・・・、
くつろぎながら旅の酒卓を楽しんでいきたいなあと思います。

順調に目方を増やしながら、
いよいよ最後の酒場、いやいや次の展示会場・札幌へ。
久しぶりの大都会ですー。

『本と酒器でめぐる酒の世界』

雪景色もつかの間。
北風が鴨川を駆け抜けてゆきます。

36年の歴史を誇るお酒の情報誌「ほろよい手帖・月刊たる」。
この度、400号のリニューアル記念として、
歴代の表紙や校正原稿見本などを並べる展示が開催されます。

今宵堂も会場に「たる」オリジナル酒器「樽猪口」を始めとした
小さな酒器たちをお届けさせていただいております。

「たる」さんへのお祝いとして、小さな酒器屋より、
お祝いの言葉を寄せさせていただきました。

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「呑む」ことにまつわる、悲喜交々がとても好きです。

私たちが好きな晩酌という時間は、
酒の旨さや肴の味で幸せの度数がぐっと上るもの。
丁寧に造られた蔵の酒を夫婦でほんの一合、
そんなささやかな贅沢を楽しみに仕事に勤しむ日々であります。

しかし、酒器屋を始めて今年で十年。
このところ、ちょっと心が泳ぎはじめました。
その日の酒が、お気に入りの銘柄や
エヘンと自慢したくなる銘酒でなくともいいな、と。
その代わり「晩酌」にちょっとした話題があれば
お得な気分になるもんだな、と。

苦労した徳利の焼き上がりの良さ、
お客さんのうれしいひと声、
娘が初めて描いてくれた似顔絵、
その日の小さな出来事が、なぜか酒を誘います。
こんな小さな家族の晩酌でさえも、
なんだかんだのドラマはあるものです。
娘が惚れた腫れたのお年頃だと、
私たちにはもっと濃ゆい「呑む」があることでしょう。

「たる」には、そんな「呑む」おもしろさが、
記事という出来事として、たくさん詰まっていると思います。
酒の紹介や呑み方、お店のことも気になるけれど、
合間に潜む深く色っぽいエッセイにも酔えます。
1月号の新春祝いに連なる新地のママの名前も、とても艶やかでした。

今回の記念の樽猪口、注がれた酒に笑いが交じったのか、涙が滲んだのか。
呑み手のみなさんそれぞれのお話をお聞きしてみたいです。
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読みものを片手に酒を啜るのは、なんとも幸せなひととき。
京都「レティシア書房」さん、
神戸「1003」さんという、
関西の素敵な本屋さん二店での展示ですので、
呑みの前にでもふらりとどうぞ。

 
『本と酒器でめぐる酒の世界』京都展
2016年 1月26日(火)~ 2月7日(日)
12:00 ~ 20:00 月曜休
会場 / レティシア書房  京都市中京区高倉通り二条下がる瓦町551
電話 / 075-212-1772

『本と酒器でめぐる酒の世界』神戸展
2016年 2月17日(水)~ 2月29日(月)
12:00 ~ 20:00 毎週火曜/第2・第4水曜定休
会場 / 1003  神戸市中央区元町通3-3-2 IMAGAWA BLDG. 2F
電話 / 050-3692-1329

十勝うまうま旅新聞

仕事と宴にかまけて、
あれよあれよと2016年を迎えましたが、
日記は徒然なるままに。
作年の北海道旅を思い出す新年です。

仕事にかこつけた長旅を後押ししてくれたのは、
楽しい吞兵衛一家「ヤムヤム旅新聞」のみなさんでした。
十勝・中札内にひょいっと移住してしまった四人家族、
学さんとえりなさん、そしてののちゃんとだいちゃん。
編集&デザインという仕事ゆえ、
いろいろな土地を旅するように暮らす中で彼らが足を留めた「十勝」。
なるほど、素敵な魅力がたくさん詰まった土地でした。

四泊五日の居候、ウェルカム宴会は、
広々としたお庭でのジンギスカン。
各家庭でご贔屓の肉があるのは流石です。
長女・ののちゃんにちびっこの世話を押し付けて、
朝採りの枝豆をつまんで、サッポロクラシックで乾杯。

おうちで振る舞ってくれた、地元の旬の野菜。
ほくほくのジャガイモ、もぎたてのトウキビも
朝の食卓でピカピカと輝いていました。

そして北海道の酒場には必ずあるという
「ラーメンサラダ」も初体験!
今回食べたかったもののひとつ、
夢が叶いました!

中札内の道の駅の鶏の揚げ串「こにく」は、
一本50円でビールがえんえんと呑めそうな旨さ。
行儀悪く歯で串からぐいーっと引っ張る姿もまた趣あり。

更別村の森にぽつんと素敵な木のおうちは、
野菜中心の和食をいただける「かっこう料理店」さん。
丁寧な仕事が、おいしさに繋がることをしみじみと感じたお昼ご飯。

色も鮮やかな旬の野菜をゆっくりいただけたのは、
奇跡の昼寝をしてくれた娘のおかげでもありましたが、
そのお料理のコストパフォーマンスの凄さに、
自分たちの仕事の襟を正されました。
「幸せを提供する」ってこういうことなんだなあ・・・と。

8000平方メートルの広々とした敷地の中にある
満寿屋商店」さんでは、お庭の芝生で仲良くパンピクニック。
十勝産の小麦にチーズ、大きな口でほおばると、
この土地の味がじーんと沁みてきます。
「十勝に産まれ、十勝に育ち、十勝を愛する」
この言葉が、そのままパンの形になっているのでしょうね。

念願の牧場体験では、娘も乳しぼりに挑戦。
ちょっと前まで乳を吸っていたのにね・・・。
なかなかの腕前、京都で発揮する機会はないけれど、
大好きな牛乳のルーツを味わえて、モウ満足でしょう。

ヤムヤムたちのお友達、こちらも素敵な十勝の二瓶家では、
十勝のチェーン銘店「鳥せい」さんのからあげてんこ盛り宴会。
子連れ宴会の先輩たちに学ぶことたくさんの楽しい夜でした!

旅半ばの出会いは、とっておきのお土産になります。
みんなの子どもたちが通う保育園の運動会にも参加して、
中札内ののびやかな子育て風景をホレボレと眺めました。
圧巻の縦割りリレー、冬の雪道で鍛えられた子どもたちは強い!

そして、中札内といえば、あの六花亭
六花の森」や「中札内美術村」。
自然と人間の手の両方を感じる素晴らしい空間、
「お菓子は大地の恵みです」という言葉に頷き、
ひとつの会社としての豊かさに憧れます。
木漏れ陽の中のレストラン「ポロシリ」さんでの
ランチワインは至福のひとときでした。

こちらも初体験の「ばんえい競馬」は、
間近で馬の姿を見る興奮の夕暮れ。
なんと観客が並走できるのです。
馬券を握りしめて、ガンバレ!と叫びながら走る
人間の姿もまた面白い光景でした。

名残惜しくも、十勝最後の晩餐は、
花咲ガニをどーんと並べた真っ赤な酒卓。
ヤムヤム家のみなさま、
本当にステキなおもてなしをありがとうございました!

十勝の〆は「レストハウスかしわ」さんの豚丼でバイバイ。
お別れした後の娘のさみしさに、もらい泣きでした。
京都でもずーっと忘れない友達、
「ののちゃんとだいちゃん」の名前を呼び続けています。

まだまだここにも書ききれないほどの思い出。
ひとつの土地の楽しさを探すことは、
そこに暮らす楽しみでもありますね。
自分たちの街ももっと楽しもうと誓った十勝滞在、
思い出もお腹もパンパンです!

果てしなき道東の味

夏の終わり、いや、初秋の空気がすでに漂う
道東の弟子屈「山椒」さんから始まった
今宵堂『ほろ酔う器展』
「展示」という大義名分を掲げ、
その土地の呑み喰い旅を楽しむのはいつもと変わらず。
今回の日記は、自然の姿に圧倒されながら巡った、
道東の旨いもんの記録です。

釧路空港から最初に向かったのは、
海風なびく釧路の「レストラン泉屋」さん。
お目当は釧路のソウルフード「スパカツ」です。
パスタ、ミートソース、トンカツが熱々の鉄板に。
少し焦げたパスタが焼きそばっぽくていいのですよね。
鉄板に弾けるソースをハンカチでカバーするおじさんの
こなれた仕草に憧れました。
カニピラフのカニ質もお見事なのは、さすが港町。

弟子屈の展示会場「山椒」さんのすぐ側、
地元の人や観光客で賑わう摩周「つじや食堂」さんでは
「チキンスープカレー」を。
夏の終わり、北海道では野菜と食べるといいよと教えられたとおり、
ひとつひとつの野菜の旨味に感動しながら。

同じく弟子屈「青龍」さんは、
「山椒」ご夫妻お気に入りのザ・地元中華。
こういうお店で展示会の祝杯をさせていただけたことに
じーんときました。
パリッパリの春巻とサッポロビールの星の
黄金色が眩しかったです。

弟子屈ラーメン」や生乳のソフトクリーム、
食べても太らない娘と、きっちり目方を増やしていく父母は、
北海道のおいしい洗礼を受けつつ・・・、
「山椒」さんを後に、車を走らせて、屈斜路湖・阿寒湖へ。

屈斜路の掘ると温泉が湧き出る砂湯では、
かわいく並んだ揚げじゃがいもを頬張り、
ついでに焼きとうきびも・・・。
買い食いはとまりません。

そして、セブンイレブンのフレンチドックをテイクアウト。
こちらでは買った後に、店員さんに
「ケチャップにしますかお砂糖にしますか?」と聞かれます。
お砂糖と答えると、コーヒー用のスティックシュガーが
ついてきて、それをパラパラとかけて食べるのが道東流。

美幌の珈琲とキャンドルのお店「豆灯」さんでは、
古いおうちであたたかく静かな喫茶時間。
北海道は焙煎の地ですが、
その味と喫茶としての質の高さを肌で感じました。
この一軒を目指して、車を走らせたい、
そんな気持ちになるお店でした。

食い倒れて行き着いた先は、阿寒湖温泉。
夜は、温泉街の酒場「浜っ子」さんの
味のある小上がりで、親子三人の初炉端。
焼き場に構えたおじいちゃんの
威厳ある姿にどきどきしながら、
果物のような甘みのアスパラガスを。
旅の疲れを癒してくれるのは、酒場と湯ですねー。

ぐるっと戻ってきた釧路の街では
「ザンギ」と呼ばれる道東の名物、
鶏の唐揚げの専門店「鳥松」さんへ。
暖簾をチラリと除くと、
心を鷲掴みにするような大衆酒場のカウンター。
子連れでは無理かなぁと半ば諦めていたのですが、
お子さんもいいよ、とおかみさん。
お店独特のソース味のタレを付けた
揚げたてのザンギをかじりながらビールを呷る。
この街にはこういう呑み方、過ごし方があるのだなあと
しみじみ。娘も大人たちに混じって
オレンジジュースでこの街の夜を過ごしました。

釧路の酒蔵「福司」を楽しむお店「蔵人」さんは、
落ち着いたバーのような雰囲気の大人の酒場。
ただ、おかみさんの素敵なキャラクターも相まって、
地元の酒好きさんたちの笑顔で溢れていました。
今宵堂の器も楽しく使っていただいています。
ここで美味しいお酒や人と出会い、
そしてこの酒場やこの街が好きになった・・・と、
常連のお客さんがしみじみ話してくださいました。
「お酒」というものの持つ素敵な力、
そして、こういう世界と関わって
仕事ができることの喜びを実感した夜でした。

釧路の朝ごはんは、駅そばの「和商市場」へ。
ここの名物は、白ごはんに魚屋さんで自分で
チョイスしたネタをのっける「勝手丼」。
和製タパスのようなチマチマとした丼作り、
観光客らしくついつい食べすぎちゃいますよね〜。
でも、これは本当に楽しい!

炉端焼きも、この地方の名物のひとつ。
しかし「喰い処 鮭番屋」さんは、
なんと朝餉と昼餉の炉端の店。
隣の魚屋で買ってきた魚介を、
プレハブの炉端台へ持ち込みます。
午前から炭火の前で美味しい魚介にありつけるなんて、
旅ならではの贅沢ですね。

道東は果てしなく広く、旅の時間は足りません。
でも、ここまで来たら、日本の東の涯を実感したくて、
納沙布岬を目指すことにしました。
東の街・根室駅前の「ニューモンブラン」さんは、
根室名物「エスカロップ」の発案の店。
フランス語で「肉の薄切り」を意味する「escalope」は、
バターライスにポークカツレツ、
そしてそこにデミグラスソースがかかった
ハイカラかつ昭和の味が落ち着きます。

店内の時代を遡ったようなレトロな色彩と、
この洒落たネーミングの洋食、
そして駅前のカニの売り出しに納沙布の強い風。
すべてがアンバランスだけれど、だからこそ、
旅の味は面白さもくっついて、忘れられないものですね。
まだまだ見知らぬ味知らぬ道東。
いつかまたきっと、次はどこを巡ろうか、
ボロボロになった地図を眺めています。

弟子屈のおいしい時間


川の木々の先が、ほんのり色付いてきましたね。
さぁっと吹く風の冷たさに秋の気配を感じます。

8月末から始まった北海道展・今宵堂『ほろ酔う器展』
20日間近くもの北海道旅から帰って、
ひと月が過ぎました。
急ぎの仕事に慌ただしくしながらも、
なんとなくいつも小さな喜びに満ちた日々。
いいことがたくさんある、ということではなく、
酒器を作ること、この街で暮らしていること、
私たちの「普段」がもっと愛しくなるような旅の経験を
家族で重ねることができたからかな、と思うのです。
仕事と生活の糧となるような風景を
私たちは北国でたくさん眺めることができました。

大自然の道東や十勝を巡った旅でしたが、
どんな果てしない景色の中にも、
いつもそこには住む人の仕事の跡がしっかりとあって、
それが北海道という土地の凄味であると知りました。
豊かな産物は、手付かずの自然から溢れるわけではないのですね。

展示会の最中は、どちらかが子守という役目のため、
残念ながら夫婦揃っての在廊はできませんでしたが、
酒器を通して得たこの旅の記憶を、
少しこの日記の中で綴ってみたいと思います。

旅の始まりは、道東・弟子屈での展示会場、
器とその周辺・山椒」さん。

京都の工房を訪ねて来てくださってから、
ずっと願っていた展示を
弟子屈・札幌と二ヶ所で開いてくださいました。
(展示の写真は、今宵堂のfacebookページでもどうぞ。)

「山椒」さんは、ご夫妻の佇まいが、
そのまま暮らしの中に溶け込んだようなお店兼お家でした。
趣と思い入れのある家具や暖炉、目に留まる本棚の背表紙。
でも職住一体の生々しさを感じさせない清々しい空気。
魔の3歳児込みの私たち家族を、三泊四日もの間、
夢のようなオーベルジュとしてもてなしてくださいました。
はちゃめちゃな娘がしっかりと食卓に腰を据える
康代さんのおいしくあたたかな夕ごはん。

野菜の味わいと素材を丁寧に扱われている気持ちが
おいしさに滲んでいて、一家でごはんが待ちきれない毎日でした。
そして、漆器の盆にきれいに盛られた肴のような朝のおかず、
土鍋のごはんと森末さんの味噌汁。

仕事で訪れたはずなのに、
食の記憶が途切れることなく浮かんでくる「山椒」さんの日々。
かすかに、時にははっきりと聴こえてくる音楽も耳に残り、
その音色は、いつも食卓の風景に馴染んでいました。

私たち、仕事と子育てにかこつけて、
いそいそとしたごはんの時間を過ごしていたのでは?
と夫婦でふと立ち止まりました。

手作りデザートはなかなか真似はできなくても、
朝食に挽きたてのコーヒーを入れること、
丁寧にお味噌汁を作ること、
家族のおいしいねって笑顔をゆっくりと眺めること。
晩酌ももっと時間をかけてもいいよね。

やんちゃ娘は、それなりに手間がかかる年齢ではなくなって、
お世話に翻弄される振りはもうできない。
もっと静かな何かを分かち合える、
そんな予感をくれた弟子屈の時間でした。

今より少し、私たちがゆとりのある生活を楽しむこと。
それが仕事と仕事の隙間であっても、
その手間は、きっと楽しく日々を照らしてくれる。
流行りの「丁寧な暮らし」という言葉とはちょっと違う
格好つけない正直さにほっとさせられる
お二人の姿に学んだことでした。

遠くからも多くのお客さまが訪れる山椒さん。
みなさんが、どんな気持ちで来られるのか、
そしてこの場所を好きでいらっしゃるのか、
訪ねてみてよく分かりました。
弟子屈のこの空間で過ごせて、酒器を並べられて、
私たちにとってもなんておいしい時間であったろうと思います。